あの素晴らしき蓮華寺をもう一度、季節を変えて紅葉見頃の時に。
新緑の時と桁違いの人が訪れていて、蓮華寺って本当は京都でも有名なお寺なのね、と再認識。
見事な紅の色付き、石橋と巨石との並びが簡素でなんとも言えぬ感じ。
やはり柱を枠組みに撮る写真が最良ですね、人がいなくなるのをずっと待って叶えた奇跡の時。
門をくぐってすぐ、銀杏の落ち葉の道。
少しだけ爪先に寒さを感じる季節、その緊張感さえ楽しんで、この景色を眺めていた。
仏教の世界では、お経は〜、庭園は〜、と副住職さんが語ってくださった。
新緑の季節よりもずっと輝いていた、紅葉の蓮華寺。
団体客が去ると、まずまずの静寂が訪れたので私は最前列で座ってお庭と向き合った。
しかし写真家の本領は撮影することにある、お経を読むように、お庭を整えるように、ひたすらカメラで写真を撮った。
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「蓮華寺の紅葉」動画を、YouTubeにあげました!
2020年7月16日
正直、蓮華寺との出会いは瑠璃光院を訪れる前の時間調整としてだった。
瑠璃光院って10時からなの?
でも朝一番に行きたいし、ちょっと時間が勿体ないから周辺に何かないかな?
そんな不純な動機での検索に出てきた蓮華寺(れんげじ)は、洛北の青もみじ名所だとある。
瑠璃光院と被るけど、それは問題ではない。
京都のお寺は、それはそれは周囲との厳しい美競争によって、
どこも個性があって素晴らしい存在感を放っているところばかり。
きっと蓮華寺も僕を驚かせてくれるさ、
そんな身勝手なきっかけで朝9時前に、山門の前で待ち構えていた。
コロナ影響終わらぬ間の、平日それも天気予報は雨だったが実際は曇り。
新緑青もみじリフレクション写真撮影目的の僕には絶妙な状況だった。
平日9時の蓮華寺参拝者は僕しかおらず、¥400を払って書院へ進む。
誰も来ないうちにメインの写真を撮り終えてしまおう、
と焦っていた僕は愚かで、結局1時間ばかり貸し切り状態。
午前中の陽の光は、池方面に降り注いでいたから、池とは反対方向の苔庭を中心に撮影。
何が素晴らしいって、和室の雰囲気に、赤い敷物(コロナ対策のソーシャルディスタンス用かな)、
柱のフレームの間から見える、緑色の庭園風景。
新緑のテカリを取り除くためにC-PLフィルターはもちろん持ってきた。
朝とは言え、和室は暗いのでISOを上げつつ、広角レンズ28mm単焦点の画角が場にピタリと合っていた。
雨のはずが意外にも曇りを通り越して陽が出てきたのは困った。
青もみじに強い光が当たってしまって、明暗差が生まれてしまうのは写真として美しくないから。
むしろ完全土砂降りの雨を期待していたが、自然には注文できません。
ああでもない、こうでもないと角度を変えて撮り続ける僕は無心になっていた。
他の雑念が消えて、覗くファインダー越しの景色しか頭に入ってこない。
カメラマン目線で言うと、この感覚が得難い到達点で、きっとお坊さんが仏様の前で集中するとき、
念仏を唱えて無の境地になるとき、それに近いものだと思っている。
書院内で撮り終えると、庭園から本堂・鐘楼堂へと歩いていく。
1,662年に再興された蓮華寺、多くが当時のまま現在も維持されている。
歩けばすぐに回りきれてしまう規模なのだが、これが加賀前田家の家臣・今枝家が個人目的で再建したお寺というのだから、
目的は祖父の菩提のためというが、文化・芸術のためと信じたくなる。
本堂の釈迦如来像は立派、一帯の苔の育て具合も素晴らしい。
やはり個人目的だとはとても思えない、よくぞ残してくれたものだ。
本堂から振り返る書院・池の眺めも素敵だったな。
モノはシンプルなのに、1つ1つが手の込んだ作品で、しかしアピールし合うこともなく調和が取れている。
質素・簡素って感じだけど、いいや、整備のための工数とお金は莫大にかかっているはず。
100枚ぐらい写真を撮り続けた、京都洛北の蓮華寺。
これが外国人観光客が来る時であったとしても、他のお寺と比べれば静かに拝観できる場所で、
5月6月は青もみじ、11月12月は紅葉の名所であることは間違いない。
またひとつ京都の名刹・写真撮影スポットを知った、そんな京都洛北の蓮華寺でした。
2023年4月30日
その蓮華寺から3kmほど離れた岩倉の一角にある「実相院」は床もみじの名所、新緑を見たくて訪問。
門前に駐車できるというありがたさ、それにしても場所が深いところにあるから一般観光客が少ない。
肝心の床もみじは写真撮影禁止のため、そもそもカメラやレンズを向けることができません。
肉眼で見た床紅葉は素敵だったけど、京都ほどハイクラスの寺院が並ぶ場所では、まぁまぁぐらいの名所になる。
何らかの制限があって写真NGなのでしょうが、観光客にとっては写真も撮れないのに行く理由がなく。
それでも実相院門跡の新緑は美しい、皇室のバックアップを受けて存在していたから、ハイセンスは灯っているなぁ。
つまり現代の観光地ではないってこと、往時の文化を繋いでいく場所が実相院門跡。
紅葉時の実相院門跡も良いのだろうが、せめて写真撮影OKにならないとカメラマンの足はむきません。
元祖・床もみじ、と呼んでも良い実相院門跡、願わくば現代に合わせて何かしらの進歩を。