渋谷という街に出店すること自体で、もう商圏というか顧客ターゲットが明確になっている気もする。
イケアは2020年冬に渋谷で新しい店舗をオープンさせることを発表した。
同年6月8日に開業させたばかりのイケア原宿店に続く、都心型ミニイケアの2号店となるのがイケア渋谷だ。
単純に、イケア原宿そのものを渋谷にコピーするのではない。
目的がちょっと異なるというのが私の見立てで、
イケア渋谷にはイケアジャパンの東京圏ミニイケア戦略のゴールへと繋がる
重要なミッションが課せられていると考えても良い。
延べ床面積の比較
イケア渋谷 | 4,800m2 | ミニ・イケア |
イケア原宿 | 2,500m2 | マイクロ・イケア |
イケア立川 | 40,000m2 | イケア |
イケアTokyo-Bay船橋 | 40,000m2 | イケア |
イケア新三郷 | 87,636m2 | メガ・イケア |
注目すべきは、通常サイズのイケア立川から、
イケア原宿へのダウンサイズ具合(40,000m2→2,500m2=16分の1までミニ化!)ではない。
同じ都心型イケアとは言え、イケア原宿からイケア渋谷は、1.92倍も面積を増やすという点だ。
マイクロ・イケア | 流行最先端のピンポイントに、マーケティング主目的で先行させる役 |
ミニ・イケア | 流行とセールスが見込まれる有望地に出店する、これからのメインイケア |
イケア | 出店してしまった郊外大型店、今後は採算考えて淘汰される |
メガ・イケア | 出店してしまった郊外超大型店、いつかは消える運命 |
このぐらいの極端な印象を私は持っている。
だからイケア渋谷店は、東京都心2店舗目という馴れ合いのものではない。
イケア原宿の「ホップ」を受けて、イケア渋谷店が「ステップ」し、
そしてイケア新宿店が「ジャンプ」に当たる、三段ステップではないか。
ミニイケアとは言え、イケア渋谷の経済効果は大したものだ。
170名もの新規雇用を生むというイケア渋谷、
そう言えば出店する場所はあのFOREVER21が撤退した跡地、それも渋谷センター街からすぐの場所だという。
都心に住む一人暮らしの若者をメインターゲットにするイケア渋谷のマーケティング戦略。
車で来店する客層は少ないだろうし、郊外店のような爆買い客は見込めない。
手で持ち帰れる程度の小物を幾つか購入させ、
収益が見込める大型家具に関しては現物をイケア渋谷店で目で見させて、
注文はオンラインで自宅へ配送というのが狙いになる。
まぁそれをやってきたニトリさんも苦労されているが、
渋谷のような一等地に土地を借りたことでの経費分や人件費をちゃんとペイできるか、
郊外大型店舗にはなかった別のハードルを越える実績が求められている。
イケア渋谷は開店したが失敗した、なんて中止撤退ストーリーなんて描けるわけがない。
それだけ重い期待を背負って、イケア渋谷は2020年冬にオープンする。
7階建ての幅狭いビル、1フロアあたりの面積は広くなくても、7フロアもあるから十分だ。
イケア新宿がオープンした時、業態改革を進めてきたイケアジャパンのここ数年の目的は達せられる。
東京都内、若者の街・原宿と渋谷にミニ・コストコを出店させたイケアの新しい試みを見て、
私たちは「あれ?イケアって何か変わったの?郊外大型店から方針転換?」と違いを感じたことでしょう。
それはその通り、2017会計年度から3期も続けて数億円以上の巨額赤字を出してきたイケアジャパンはビジネスモデルの転換が急務だった。
もう郊外大型店を出しても収益が出ずらい環境、それはひとえに東京一極化・地方少子化の影響。
ニトリという強力なライバルと完全競合だが、都心部で売り上げをあげなければイケアの企業としての成長はない。
つまり東京を始めとする大都市圏に、小型イケアを幾つか並べて、現物をそこで見て、
実際の注文はオンライン&自宅配送、という業態に変化していくことが中期計画になるだろう。
ゴールは新宿なのだ。
何故、新宿?という問いには数値で返答するが、昼間人口とJR駅利用人数を俯瞰していくと、
生活というか娯楽の消費者という意味では、東京最大の街が新宿になる。
<昼間人口>
港区・世田谷区・千代田区は平日昼間のオフィスの比率が特に高め
東京都全体 | 1,644万人 |
23区全体 | 1,250万人 |
港区 | 97万人 |
世田谷区 | 91万人 |
千代田区 | 87万人 |
新宿区 | 80万人 |
大田区 | 71万人 |
練馬区 | 62万人 |
渋谷区(渋谷・原宿) | 55万人 |
豊島区(池袋) | 43万人 |
<JRのみ 駅利用者数 1日あたり>
新宿駅がぶっちぎりで数字が高い、平日・週末を問わず人の往来が多い=そこに消費が生まれる
新宿駅 | 77万人 |
池袋駅 | 55万人 |
東京駅 | 46万人 |
横浜駅 | 41万人 |
品川駅 | 37万人 |
渋谷駅 | 36万人 |
原宿駅 | 7万人 |
でも東京都心で最初にイケアが出店したのは原宿、その次が渋谷。
どうして新宿に真っ先に出さなかったのか、それは不思議だ。
その鍵は、どうやら順序立てたビジネスモデルの構築・様子見にあるようにお見受けする。
原宿は誰もが知る若者流行発祥地だが、上のJR駅利用者数を見る通り、
新宿・池袋・東京・渋谷などと比べると、数字としては遥かに小さい街だ。
何しろイケアジャパンとして東京都心にミニIKEAを営業開始させるのは初の試み。
まぁ熊本市でミニIKEAを3年続けていた経験はあれど、東京とはまた状況が違う。
だからファーストステップとして、イケア原宿で延べ床面積2,500m2のプチIKEAを誕生させて実績を作る。
その半年後に、より大きな街・渋谷で、延べ床面積4,800m2の
ミニIKEA(=東京スタンダードサイズIKEA)を立ち上げて、本格的な営業ノウハウを掴む。
この2手が、お試しと呼ぶには贅沢すぎる出店環境だが、イケアジャパンの初期投資なのだ。
そこでベースを持ったイケアが満を持して進出するのが、東京最大の経済街・新宿。
ポイントは、イケア新宿の店舗そのものはアンテナショップ・小物販売に近くて、
収益の柱となる中型・大型家具の実演販売をして、EC(ウェブ注文・自宅お届け)に引っ張るということ。
そのためにはとにかく多くの人の目に止めらないといけない。
新宿のような小売業の超激戦地で、今更一等地を獲得するのも時間と労力と金がかかるだろうし、
まだオープンまで少し時間がかかるのは当然だろう。
原宿→渋谷→新宿で完成させるミニイケアのノウハウを、大阪・名古屋はもちろん、
札幌や広島などの地域大都市にも展開させる、そんなイケアジャパンの商業的成功を僕は両手を広げて歓迎しているよ。