今年も新緑を撮ろう、できれば未知の場所で。
そう思い立って、ウェブ上で探し当てたのは滋賀県長浜市の鶏足寺(旧・飯福寺)。
新緑名所の探し方は簡単さ、秋の紅葉の名所に行けば、そのままそっくり初夏の新緑の名所だから。
真っ直ぐ一本の参道、この石段の連なりが鶏足寺の全て。
石道寺の駐車場から山道を歩いてきて、この参道の前に立った時、「ここか!」とすぐ分かった。
安土城の大手道を連想したよ、魅せるための直線空間、防衛の観点を切り捨てて、人々の印象を掴むの?
この素晴らしい仕掛けに心打たれて、カメラで写真を撮る前に、僕は一息ついたっけ。
新緑の季節は良いね、こんな名所なのに僕の他に誰も歩いていない鶏足寺の参道、存分にシャッターを切れる。
そして呼吸を忘れるほどに写真を撮りまくった、平日の仕事疲れなんてその効果に見事消し飛んだ。
鶏足寺本堂というか、旧飯福寺の名残というか、伽藍はとうの昔に焼失して、寺跡はただの復刻された小屋。
これがありがたいのではない、この参道の両脇・上下を覆い尽くしているもみじがここの命。
上の写真は超広角レンズで撮った一枚、森の中を参道が一本突き抜ける様子が分かるだろう。
秋はこの参道に人がいっぱいらしい、山の麓の駐車場からこの鶏足寺まで1時間は歩かないといけないのだとか。
なのに新緑の鶏足寺は無人の如し、結局僕がすれ違ったのは2組だけだった。
写真に撮れば、この正面のアングル一本勝負だから、それはつまらなくなるけど。
鶏足寺の石段、見る者を魅せる仕掛けが込められた参道。
紅葉の時にも鶏足寺を獲れるのだろうか、撮れたとしても人の姿が多数写ってしまうのなら。
秘密の場所、期待以上の風景撮影被写体の最高峰、カメラマン日和というものだな。
この己高山は山岳信仰で知られるし、この一帯は少年時代の石田三成、長浜城主だった羽柴秀吉も歩いただろう場所。
歴史ロマンまでが僕に語りかけてくる。
鶏足けいそく=もみじ を意味する言葉、ここはつまり紅葉寺を名乗っているのだ。
僕にとっては今年の新緑の代表作が撮れた鶏足寺、この時のこと僕は忘れないでしょう。
こんな景色の中、山奥にあるのが鶏足寺、秘密の場所らしさが出ている。
すぐ近くの神前神社の石段がまた美しすぎて、走らせていた車を急に停めてしまった。
あなたたちは僕を良い意味でびっくりさせてくれた存在ね。