「トロッコ電車で、黒部峡谷へ」
この言葉だけで、どうにもこうにも心がくすぐられた。
観光旅行者としても、紅葉写真を撮りたいカメラマンとしても、それは凄く魅力的なフレーズだよ。
秋の黒部峡谷へ、一歩早い紅葉を探して。
11月の紅葉シーズンが待てず、まだ10月なのに心を高揚させ、富山県の黒部峡谷を訪れた。
トロッコ電車をネットで予約していたが、宇奈月温泉駅の近くの駐車場が満杯で車が渋滞。
予約の時間を過ぎるかと思い焦った、ギリギリでトロッコ電車の特別客車(窓付き)に乗れた。
10月末だから、もう風が冷たいと思って、窓付の特別客車をチョイス。
普通客車だったら窓がない、1時間以上乗っていたら身体が冷えてしまう。
トロッコ電車特有の狭い車内が、黒部峡谷らしい雰囲気を最初に生み出しているのかな。
走り出すと現れる美しい川の水の色、奥に進むにつれ色づいていく周囲の木々。
それらは素晴らしい景色だったが、1時間もトロッコ電車に乗っているとどうにも飽きてしまう。
欅平に着くと、紅葉ピークよりまだ2週間は早かったか、紅葉はまぁまぁの色づき具合。
紅葉していない、とは言えないが、まだ紅葉の始まり。
奥鐘橋を渡っていたら、少し人だかりができていた。
何だろう?と近付くと、離れた場所を指さして、みんながガヤガヤと話している。
「カモシカだよ!見れる?分かる?」
上の写真の真ん中にカモシカがいるけど、岩に同化していて見えにくい。
それにしても、こんな日中に希少な野生動物を見ることができるとは。
清流と岩にかかる紅葉が美しい、赤い鉄橋がアクセントね。
始まったばかりの紅葉シーズンでもこれなのだから、ピーク時はどれだけ素晴らしいことか。
まだ盛りには遠い紅葉だけど、こうして写真に残してみると、なんだかとっても素敵な場所に見える。
美しい空想、紅葉ピーク時のことを思い描きながら歩いていた。
最高のピーク時に最高のカメラで写真撮りたいな、でも再訪する機会は訪れるかな。
帰りは宇奈月温泉の足湯に入り、古い和菓子屋さんで買った和菓子をいくつも食べ、4時間かけて愛知まで帰った。
一度は来たいと思っていた黒部峡谷、確かに富山の秘境であることは間違いない。
僻地にダムを造り、エネルギーを確保しようとする考え方が分からない。
現代では通用しない考えだろうが、その当時にはそこに合理性があったのだろうか。
美しいものを見たいから、トロッコ電車を引くのなら分かるけど。
紅葉の黒部峡谷へのトロッコ電車旅行、それは特別な旅だった。