京都一周トレイル40kmを走ろうだなんて苦行を、どうして僕は好んで選ぶのか。
アメリカ赴任中にずっと思っていた、帰任したら京都一周トレイルを走ろうと。
そこまで熱望していたが、別にコースの美しさ、京都の風情を感じながら走れることは2番目の理由になるのだろうね。
1番目の理由は、43歳になった自分の肉体がまだちゃんと動くことを再確認したいから。
自分としては切実な理由だが、端からすればあまり立派な理由ではないか。
37歳の時に初めて京都一周トレイルを走った、あれは大変な冒険だった。
年齢に逆らう超長距離トレイルランニング、「自分自身を取り戻す旅」と言えば格好良いのだが、どう足掻いても自己満足のRUN。
4回目になる京都一周トレイルだから、コースをアレンジしてみた。
苔寺から嵐山までの山コースを省き、その代わりに神護寺を参拝する。
鞍馬寺から大原までのコースを省き、その代わりに貴船神社から鞍馬寺の山越えをする。
自分が行きたい場所を組み込む狙い、コースの合計距離は40km相当になるから帳尻は合う。
阪急嵐山駅を7:30に出発。
渡月橋を渡り切って、振り向いた嵐山の新緑が美しい。
天龍寺の境内に入っていき、塔頭寺院の入口を覗き込むとどれも日本の美があり素晴らしい。
気分を良くして走り出し、野宮神社の小さな苔橋、大好きな嵐山竹林の小径を走り抜ける。
観光客皆無の時なので、無人の竹林の小径を走り抜ける時の爽快感、きっと一生もの。
こんな時でも竹林をメンテナンスされている方々がいて、頭が下がる思いね。
小倉池の横を抜けて常寂光寺の山門、いつかまた紅葉時にお逢いしましょう。
常寂光寺の紅葉にもう一度会いたいと思う、京都一番の紅葉名所。
二尊院の総門を過ぎれば、嵯峨らしい清涼感満載の道に出て、爽やかランニングが叶う。
あだし野念仏寺の周辺町並みはいつ見てもハッとさせられる。
嵐山の華やかさは抜けるが別の美学がある。
嵯峨鳥居本までが、走っていて脇見しがちで、人気があって、京らしい観光地。
そこから六丁峠までは一気に登りの峠道になって、周りは深い森、町から山へ。
吹き出す汗も六丁峠からの下り坂で落ち着いていく、そして保津峡の景色がチラチラと見えてくることで気分も上がる。
清滝川まで下りると「この先、景色サイコーです」の言葉に誘われ50号線をそのままトンネルくぐって進む。
出た先の左にある細い道から、保津峡のビューポイントへ。
嵯峨嵐山の風情とは違い、ここからは自然と触れ合う京都一周トレイルランニングになる。
清滝川を並走するコース、もちろん舗装道ではなくて岩と土を走る道になるから、ランニング専門シューズだと厳しい。
石を蹴飛ばしても大丈夫で、防御力の高いトレイルランニングシューズを履いてきて正解だ。
さっきまでとは全然違う道だな、古都らしさも観光地の雰囲気も全くない自然の川沿いランニング。
まだ足に疲れは全くないが、先は長いからペースはほどほどにセーブしながら走る。
それにしても本当にこの道で正しいのだろうか?ぐらいに心配になってきた頃、嵯峨清滝の集落に着いた。
有料駐車場や公衆トイレがあったので何だろう?と思ったが、愛宕山への登山口があった。
愛宕神社二の鳥居を過ぎると、清滝川に並走するゆるやかな林道を上がってゆくのが続く。
途中で、意外な光景に出逢った。
物凄い美林、私の生涯でもこんなに美しい林の道には出逢ったことがない、というぐらいの道で、
思わず走る足が止まり、何枚も写真を撮った。
こんな美林の間を通る道を駆け抜ける喜び、京都一周トレイルコースの名を挙げてくれる魅力的な道。
この辺りでスタートから10kmが過ぎたが、これまで平坦な道だったので疲れはない。
小さなダムを越えると、川床風のお店が見えてきて、高雄神護寺の参道入口へ出た。
今回の目的のひとつだったので、メチャクチャ厳しい石段が続く高雄神護寺だが、
疲れることはお構いなしに高雄神護寺まで上がって、素晴らしい密教仏像たちを見る。
十二神将と四天王、偉人・空海に想いを馳せる光栄な時間。
写真はこちらの高雄神護寺のページに載せています。
普通に京都一周トレイルランニングをする方だったら、石段で体力を削られてしまうので高雄神護寺は素通りするのが賢明だろう。
高雄の車道を進み、このまま高山寺まで行きたい気もするが、高雄錦水亭から林道上り道に入っていく。
ここからが本格的なトレイルランニングコースになる。
平坦な道は終わり、ハイキングコースというか、まぁ登山道だね。
それがこの登山道、林道が個性的で、京都では有名な木の産地、道脇の林の整備され具合が素晴らしい。
側枝を全く排除して、一本木が真っ直ぐ上だけに生えている。
天井に至る途中に全く障害物がないから、視覚的にスッキリした林で、きっと木の生育にも良いのだろう。
物凄い工数をかけて林を育てていることが伝わってきた。
美林ですね、この道は、と関心しているがその林道の上りは永延と続いていて疲れが出てきた。
ようやく林道が終わってトレイル(山道)に入るが、そこからしばらくは登りオンリーで疲労蓄積。
高雄神護寺と美林の登りで一気に足に負担がきた、ここから自分との戦いが始まる。
フラットな道を進むと沢の池に出る。
神秘の色をしたこの湖も、突然に出現する京都の意外、町中からそう遠くはないのに。
湖畔でおにぎり食べながら、今日初めてのまとまった休憩を入れる。
背負っているノースフェイスのマーティンウィング6には、おにぎり5つと、アミノバイタルゼリー3つ、あとは塩分補給のタブレット多数。
補給が大事だ、この年齢になってくると。
逆を言えば、補給モノさえしっかり準備すればこれまで通り走ることができるのが人間の身体。
沢の池からはアスファルトの林道をずっと下り、途中でトレイル欠落による迂回路があったが、そのうちに山道へと再び入る。
京見峠や山の家はせがわのある一帯は小高いので、京都の町中を一望することができる。
時刻は13時になってきて、走り始めてから5時間半が経過。
アップルウォッチが電力切れになり、ついでに水の残りが乏しくなってきた。
車道に出て進むと、「氷室別れ」というネーミングの交差点に出くわす。
氷室京介ファンな僕にとっては、なんとも悲しい言葉ではないか。
しぶしぶと氷室の集落まで続く坂道を登っていく、氷室京介への道を。
峠を越えて道を下ると氷室神社が見えてきて、「氷室大明神」という言葉にはなんだか歓喜!
ひたすら穏やかな氷室集落をゆっくり走る、期待してもいなかったが飲み物の自動販売機はない。
昔は京都御所に氷を届けていたという氷室集落、その氷の保存庫(=氷室)跡を見にいく。
本当にここに氷が保存できたの?とは思ってしまうが、3つもはっきり残っていた氷室跡。
なんだか後ろ髪ひかれながら氷室集落を後にする。
山に入る時は獣侵入防止のゲートを念入りに閉めて。
そこからは山道で、ちょっとした美林が出てきたり、荒れたトレイルコースであったり。
山幸橋と関西電力発電所あたりで水が切れた、もう少しで二ノ瀬駅だからと我慢。
そこから夜泣峠までが地獄の登り道というか、なかなかの登山道だった。
今日ここまで走ってきた中では一番の登りの厳しさと連続さ。
水切れは自分が悪いが、なかなかハードな時間で汗が吹き出してきた。
夜泣峠を通過するあたりはもうカメラで写真撮り遊びする余裕もない。
峠から二ノ瀬駅までの長い下り道で復活して、町に降りる。
穏やかな町で気分が良いが、二ノ瀬駅近辺でも自動販売機は見つからず、鞍馬への車道を走り続ける。
この辺りは普通の車道と並走するから、本来京都一周トレイルを歩く方は電車を使ったほうが良いぐらいの感覚ね。
以前に走った時、この辺りに自動販売機があってリフレッシュできたよな、の記憶があったが、貴船口手前の交差点で救いの自動販売機を見つけて補給。
この道を走る方は補給をしっかりすると良いですよ、神護寺から二ノ瀬あたりまではコンビニはもちろん自動販売機もない。
京都一周トレイルならここから右の鞍馬寺方面だが、今日はコースを変えて左の貴船口方面へ、貴船口駅を通過。
蛍岩という蛍名所が貴船川沿いにあった。
貴船神社までの2kmはバスも出ているが、緩やかな登り道を走ったり歩いたりして距離を稼ぐ。
川床料理を出すお店が見えてきて、次第に観光地の雰囲気。
貴船神社の大鳥居と灯籠石段、ここは初めて訪れる場所だったからカメラマンとして盛り上がって写真に夢中。
これも別ページの貴船神社に特集組んでいるからここでは詳細割愛。
今はコロナウィルス影響で観光地は封鎖されている、貴船神社から鞍馬寺までの山道はクローズされていたので予定変更。
貴船口までを一気に駆け下りて、電車を乗り継いで帰った。
合計でちょうど40km、5万歩になる僕の京都一周トレイルランニングはこうして終わった。
なんと、足や体にはまだまだ余裕があって、ひどい疲労は残っていなかった。
直近1ヶ月で140kmは走り込んできた練習の成果だろう。
ずっと前は走り終わった後の3ー4日は体がボロボロだったが、今回は翌日からもう大丈夫。
まぁ東から回る比叡山上り下りはないし、西回りの京都一周トレイルで最初に出てくる嵐山を避けたから、
ひどい山登りは少なかったということもある。
それにしても案外あっさりとこなすことができたこの日の京都一周トレイルランニング。
本来予定していた鞍馬寺まではもちろん、無理すればそこから静原を越えて大原までの50km級ですら走り切れたと思った。
京都一周トレイルといっても、比叡山登り下りがあるかないかで、全然違ってくるという話。
西回り京都一周トレイルランニングは2回目だったのに、その景色の転調の豊富さには幸せを感じた。
これほど面白いトレイルランニングコース、きっと日本の他どこにもない。
トレーニング積んできて良かった、もう一度走って正解だった。
これで43歳の壁というか、加齢による不安も払拭できて、心も落ち着いた。
京都一周トレイル40kmの苦行は、充実感に変わっていった。
このページに残した写真は僕の宝物、いずれ見返してこの日の京都一周トレイルランニングのことを思い出そう。
2016.5.14
全長80kmの京都一周トレイルのうち、最も美しいのが東山コースだと知った。
伏見稲荷~清水山~大文字山~銀閣寺~比叡山延暦寺、京都の有名どころが連続。
どれも程よい距離感なんだ、トレイルランニングを中心にしつつ、息抜きで観光できる。
前回の京都一周トレイルランニングでは、体力の限界でショートカットしてしまった東山コース。
道に迷い過ぎたこともあって、無念が残ったままだった。
30代最後の挑戦、今を逃すと当面は走れないから、東山コースを再度走ることにした。
東山コースのスタートが伏見稲荷というのは贅沢、
しかし見どころが多すぎて写真撮影と観光にパワーを使ってしまう。
四つ辻の先から京都南部を一望、大鳥居が見える。
朝7時過ぎに歩き出して、結局1時間近く伏見稲荷の世界に引き寄せられていた。
泉涌寺を過ぎ、標識9-2と10の住宅地で迷ったが、優しい地元の方に声をかけてもらってコース修正できた。
この辺りは平地ばかりなので、RUNで駆け抜けるスピードが心地良い。
国道一号線を地下道でくぐり、清水寺の裏、清水山から東山山頂公園へ。
京都タワーが見える展望台。
先を急ぐか迷ったが、将軍塚を拝観してみると予想を超えて素敵な場所だった。
清水の舞台よりも大きな舞台(木製展望台)があり、
その先の景色と合わせて最初に目にしたときは感激の声が出た。
ここからの京都の夕景・夜景は美しいだろうな、いつか三脚とフルサイズカメラを持って試したいものだ。
休憩がてら、青不動明王(国宝)と向き合って過ごした時間は意味深だった、それから庭園もキレイな将軍塚。
青蓮院門跡からは下り道、知恩院の裏山を通って東山の都ホテル京都~蹴上駅付近のねじりマンボ。
新緑のインクラインから坂を上がり、日向大神宮へ。
走る途中に有名な場所が点在しているから楽しい東山コース。
日向大神宮からは伊勢神宮に近い空気を感じる。
天の岩戸くぐりを過ぎると山道へ、南禅寺の裏山を通っていることになるのだろう。
トレイルランニングと書いたが、今日は予定距離が40kmと長いし、体力の温存を考えて登りは歩き。
京都一周トレイルをそれて、大文字山の頂上へ。降りると銀閣寺の横に出た。
広角レンズではないので撮れないが、広がる景色が異様に近いことに驚き。
山と街が隣接しているのが京都。
哲学の道、先月に来た時には散った桜の花びらでピンクの川が出来ていたのに、今日は新緑一色ね。
日本バプテスト病院からが、いよいよ比叡山登りだ。
東山コース最大、いや、京都一周トレイル全体でも最難関。
標高差約600m・2時間ほどの登山だ、これ単体なら良いが、今日は40kmを走る予定なので体力をここで多く使う。
もはやトレイルランではなく、単なる厳しい山登りに。
比叡山延暦寺へと向かう修行僧のイメージで。
ケーブル比叡駅に着く頃には登坂の一歩を踏み込むのが辛いぐらいの疲れ方に。
伏見稲荷を7:15に出発、ケーブル比叡駅に15:00到着だから、東山コース24.6kmを7時間45分かけて踏破。
分かっていたが、一番楽しいのは伏見稲荷から銀閣寺まで。
比叡山を登るのはタフ過ぎる。
続いて京都一周トレイル北山コースへ、体力の半分以上は使い果たしたが、まだ先は長い。
つつじヶ丘一帯の景色が素晴らしい、山登りの厳しさは消え、高所の丘ならではの優しい感じが出ている。
北山コースは、ケーブル比叡駅から二ノ瀬駅の17.9kmだが、その手前の鞍馬駅をゴールに考えていた。
伏見稲荷から鞍馬寺駅でちょうど40km=10里になる。
比叡山延暦寺・浄土院への階段、いよいよ聖域へ踏み入れる予感に、疲れた心身でもゾクゾクする。
常行堂と法華堂をつなぐ橋をくぐる、なんだかそれだけで光栄な気分。
風が冷たくなった気がして、身が引き締まった。
夕方近くになったからではないはず。延暦寺の気配だろう。
すでに体力は大半をすり切らしているが、足が痛いということはない。
これなら大原でギブアップせず、鞍馬寺まで行ける。
前回、京都一周トレイルを走った時は比叡山登りで体力と時間を使い果たし、
ここからショートカットしまくって大原に出た。
備えをしてきただけあって、今日は大丈夫。
先にも後にもない記録を打ち立てることだけが身体を支えていた。
玉体杉から京都御所方面を望む、随分遠いところまで来たものだ。
ここからが最後のボスの登場だった、横高山への急坂は限界が近づいている身体へのトドメ。
登り切ったと思ったら、すぐに水井山への急な登りが。
標高794mのここが京都一周トレイルの最高地点。
仰木峠からは下り道、時間をセーブしたくて走り始める。
鞍馬寺まで体力は持つが陽が落ちて暗くなるとマズい。時間との勝負になってきた。
ボーイスカウト道を下ると、大原戸寺までの平地を走る。
夕陽が眩しい。写真を撮る手数も少なくなってきて、先を急ぐ。
戸寺バス停前、この信号が以前の京都一周トレイル2回ともゴールを迎えたので思い出深い、しかし今日はまだ先がある。
高野川の緑が美しい、その先の杉林が相変わらず美しかった。
もう何も考えず静原の里へ。
今のペースなら真っ暗になる直前に鞍馬寺まで行けると踏んだ僕は、諦めずに静原を走る。
水田と鯉のぼりにカメラを向けた。
静原神社を素通りし、薬王坂を一歩一歩登り切る。鞍馬寺に着いたのが19:24。
薬王坂を下る道は暗闇直前、あと15分遅かったらアウト。
結局、伏見稲荷から銀閣寺・比叡山延暦寺を経て、鞍馬寺まで40kmの京都一周トレイルランニング。
正直、そのうち4分の1も走っていないが、昔の人は1日10里(=40km)を普通に歩いたという伝説をようやく達成できた。
39歳で40kmをトレイルランニングできたという実績は、これからの僕の自信になるね。
京都一周トレイルで、もう思い残すこともないよ、それは目いっぱいの活動だった。
限界に近付き過ぎて、3日後まで筋肉痛と疲れが残ったのも初めての経験。
各地にトレイルランニングコースは数あるけど、京都一周トレイル以上のものに出会う自信がない。
2014.6.8
京都一周トレイルランニング(西山コース)苔寺~嵐山~嵯峨野~高雄~氷室~鞍馬~大原
京都一周トレイルランニング、1日40kmを走ったり歩いたりする大冒険。
朝6時には上桂駅をスタート、鈴虫寺を通り過ぎ、まずは苔寺まで。
前回の京都一周トレイルラン(伏見稲荷~大原37km)では朝の出発が遅く、コースアウトが多かったが、失敗は繰り返さない。
なにしろ40kmだ、僕にとっては人生最長距離のトレイルランニング。
完全予約制の苔寺はいつか訪れたい場所の一つ、外から見ても特別な気配を感じた。
京都一周トレイルの標識は親切丁寧で、数多く、ありがたい仲間。
苔寺の裏山はキレイな竹林、松尾大社の裏山を越えて嵐山方面へ。
感動したのはこの景色、嵐山・嵯峨野と渡月橋を山の上から見渡す角度。
未知の京都に出会った気がして、足を止めて見入ってしまった。
嵐山をくだっていると、ここもまた竹林の名所が、目を細めて景色を楽しませてもらう。
阪急嵐山駅前のミニストップで食料品など買い込んで荷物整理していると、僧たちが隊列を組んで駅へ向かってきた。
京らしい光景だなぁ、早朝=僧=格別にありがたい気がする。
「渡月橋を走って渡る」なんて、光栄なこと、特異なこと、貴重な体験。
こうして見ると嵐山は高く、あの絶景も納得、そして嵐山にその昔は城が築かれていたのも合点。
嵐山公園展望台で標識を見失い、林を降りて着いたのが御髪神社、髪が多すぎるぐらいの僕なので一礼して通り過ぎる。
常寂光寺~二尊院~祇王寺~念仏寺と、嵯峨野の道を軽快に走り去る。
いつもは一眼レフを持って写真に夢中になったこの場所をRUNするとは面白い体験だ。
まだ朝8時だから人通りも皆無で、お店も開いていない、こんな嵯峨野も初めてね。
とにかく先が長いから、嵐山・嵯峨野ではゆっくりするつもりはなかった、平地だし一息に駆ける。
念仏寺・奥嵯峨野鳥居本から景色が転調、観光地から一昔前の景色へ、六丁峠を過ぎたら都から山奥へ変容。
六丁峠直後の景色はすでにローカル鉄道気分、山ひとつ越えたらこんなに違うとは!
桂川と清滝川の合流点・落合の絶景。
ここまでほぼ道に迷うこともなく順調に距離を稼げたよ、華やかな嵐山・嵯峨野はおしまい。
高雄までは川沿いの平地、その後は山だから、まだしばらく走り続けようと先を急ぐ。
また驚いたよ!清滝川沿いのトレイルはこんな景色の中、本当に七変化、様々な表情を見せる京都一周トレイル。
ゲンジボタルが見られるという清滝川、京都は本当に見どころに飽きない場所、走って知る新しい京都ね。
愛宕山への登山口、比叡山と並ぶ信仰の山。
美しいトレイルが続くのです、京都一周西山コース、別に美術館の中を走っているわけでもないのに。
高雄の川床料理店の風景、木と川の眩しい緑を楽しむなんて贅沢だなぁ。
神護寺の参道へ出た、ここはいつかお参りに来たことがある道だから、「あぁここね」と点と点がつながった。
苔寺から神護寺まで15km・3時間半ほど、目まぐるしく景色が変わっていく展開だった。
こんな高いレベルで楽しませてくれるトレイルは他にはないだろう。
高雄の白雲橋からは長い登り坂、特筆すべきは一体の杉の美林。
自然にしてはキレイすぎる林、後で調べると北山磨き丸太という有名な木材の産地だった。
次に見えてきたのは、なんと山奥の湖・沢ノ池、そのサイズや水のキレイさ、周囲の鳥さんのさえずりは逸品。
またも劇的に転調する京都一周トレイル西山コースの仕掛けにびっくり。
たまには自分撮りを、全身黒にしつつ、ヘンリーハンセンの爽やかなマリンブルーのカットソー。
去年からの健康管理が成功して体重は60kg、今が大人になってから一番走りにキレがある。
先月からトレーニングもしっかりしてきたし、40km走れる体になっての京都一周トレイルラン挑戦です。
石仏たちにご挨拶、このコースもしっかり整備されているから走りやすさは抜群。
梅雨入り直後で道はぬかるんでいるが、気温は30℃手前、まだギリギリ走れるコンディションね。
今を逃すと体力の消耗が激しくなるから、ラストチャンスと思って今日走ることにした。
京見峠一帯からはかつて京都の街並みが一望できたという、今も部分的には見える。
20km走り、お昼近くになったからお腹がすいてきた、すると「山の家 はせがわ」の看板が。
山奥のロッジ風レストラン「山の家 はせがわ」でハンバーグをいただき、小休憩。
風が心地よく、美味しい料理に体力が回復していく感じ。
さてあと20km走ればゴール、そろそろ足にも疲れがたまってきた頃。
氷室別れを通り、氷室方面へと向かう、僕が是非とも訪れてみたかった氷室へ。
「氷室違い」だけど、氷室神社で丁重にお礼をのべました。
ありがとう、もう20年間もあなたの音楽のファンです、いつもいつの時もあなたの音楽に励まされました、氷室京介様。
氷室はのどかな農村、京都の市内からそう離れてもいないのに、こんな場所があるなんて、落差に驚き。
氷室跡があるというので、疲れていても寄り道せざるを得ない、だって氷室さんに触れ合える気がして。
これが氷室跡のひとつ、ここに穴を掘って氷を保存しておいたのが氷室だという。
「真夏なのに氷室は秋の風」、確かに涼しい気がした。
夜泣峠あたりになると疲れがたまっていると感じた、ここまでの時間と距離は順調、まだ歩けるのでゴール到達が見えてきた。
鞍馬手前のニノ瀬に降りてくると、不思議な場面に遭遇。
老朽化で「このハシ渡るべからず」となった橋、まるで一休さんのトンチのように。
鞍馬名物の天狗さん、前回の伏見稲荷からの挑戦はここをゴールにしたかったのに、到達できなかった。
今回は準備万端+経験を積んだので、40kmを完走できそう、すごい冒険だね。
鞍馬寺は人で賑わっていた、それから朝から晴れていたのに、ここでポツリ、と雨がきた。
ラストスパートをかけて薬王坂から静原へ、また氷室のような山里に出た。
もう登りと下りでは走れないけど、平地ならまだ走れるよ、静原神社付近を走って元気に通過。
江文峠はキレイな道が続きます、ますます雨が強く、予想外の展開に戸惑った。
ゴールの大原に着いて、達成感にひたり、のどかな風景に癒される、と思いきや大雨に道を阻まれ民家の軒下で雨宿り。
まだ時間も5時過ぎ、大原三千院まで行けば42.195kmになるかなと思っていたのに上空は雨雲に覆われてしまった。
5時半のバスを捉まえようと、雨の勢いが弱まった時を狙って戸寺バス停前までダッシュ、まだ走れたよ、僕。
こうして京都一周トレイル80kmを走り/歩き通す冒険を2日に分けて達成できた。
見どころが多く、しかもそれが歴史古いものだとか、有名なものだとか、その合間に現代の華やかなものもあったり。
転調の多さに感動、これほど素晴らしいロングトレイルは他にはないだろう。
考えれば1日で10里/40kmなんて大冒険は十代の頃にもしたことがない。
未知の自分にも巡り合えたし、大好きな京都を一層深く理解した気になって、満足な京都一周西山コーストレイルランニングだった。
2014.5.4
京都一周トレイルランニング(東山コース)伏見稲荷~清水寺~南禅寺~銀閣寺~比叡山~大原
京都一周トレイルをトレイルランしようと思った、37歳になったので37kmを。
東山コースの伏見稲荷からスタートして、目標は鞍馬寺まで。
寺社を訪ねて30回ぐらいは京都に来ているが、京都外周の山野は足を踏み入れたことがない。
京都の地形を理解し、普段は行かない場所にも行ける興味深いコースだと思って。
朝6時から走り始めるつもりが、前日夜に早く家を出れず、なんとスタートが8時まで遅くなった。
京都一周トレイルの第1号標識は、京阪の伏見稲荷駅にあった。
伏見稲荷には初めて来たから興味津々だったが、最小限に観光して、ひたすら先を歩く。
しかし伏見稲荷の朱色の鳥居の数、連なり、魅せ方には驚いてしまった。
一眼レフを持ってきて撮りたくなる気持ちを抑え、こんな場所を走れる贅沢にひたる。
400段あるという階段を上り、四つ辻まで進む。
ようやくトレイルになったのでゆっくりと走り出す。
すぐに住宅街になって、標識はあったのだが、見落として進み、大きな寺が見えたらと思ったら東福寺だった。
走り出したばかりで元気だったので、紅葉の東福寺を思い出し、境内を散策。
東福寺を突っ切って京都一周トレイルに戻れるかと思ったらムリで、結局元の場所まで戻る羽目に。
この往復1.5kmのロスは大きかった、落ち着いて進もうと心に誓い、御陵と泉涌寺を通過。
i-Phoneのグーグルマップで経由地に印をつけておいて、GPS機能で迷わないようにしたつもりが裏目にでまくり。
悲田院の境内まで走ってしまったら、眺望は良かったものの、ここでもコースアウト。
剣神社を過ぎた住宅街でまた道に迷い、通行人から声をかけられて感謝。
度重なるコースアウトで心身にダメージ、朝早く出発できていなかったから焦りも出始める。
京女鳥部の森に入ると、鬱蒼とした野山、京都市内にもこんな場所があるのか。
国道1号線に出たら、致命的なミスをした。
渋谷街道に左折せず、そのまま国道1号線を直進してしまって、「あれ車道?」と思いつつ後戻りもできず、そのまま街中へ。
これでまた往復1.5kmはロスだよ、ここで大きな心身消耗+時間的な焦りがMAXに。
清水山から東山山頂公園へは軽い山登り、あの清水寺の裏はこんな山だったんだ。
鞍馬寺までの先は長い、ましてや祭壇の難関・比叡山の登りが待ち構えているのに、こんな場所で時間を使えない。
今回新調してきた、SHINANOのトレッキングポール「フォールダーFree」は軽量、強度もある。
この強い味方を両手に、将軍塚~尊勝院~粟田神社と駆け抜けて、お昼休憩を三条通のコンビニで。
焦りつつ、スタートしてから初めてまともな休憩を取り、次の蹴上からに備えた。
桜の名所・インクラインは、すっかり新緑に様変わりしていた。
蹴上駅からねじりマンボという赤レンガ積みのトンネルを越えて、直進してしまって今日5回目のコースアウト。
南禅寺への近道を見つけたが、ここでも心身消耗を繰り返してしまう。
日向大神宮までは登坂、「元伊勢」の別名に相応しく、厳かな空気を感じた。
ここから山の中のトレイルになり、時間を稼ぎたい僕は走り始める。
岐路の思案処では熟考をかさね、コースアウトをこれ以上繰り返さない!と勉強。
東山の南禅寺や永観堂の裏はこんな山になっていたんだ、なるほど、紅葉の美しさはここからか。
大文字山の山頂に火床があるようだったが、目的地優先になっている僕はコースを直進。
今思うとちょっと惜しいことをした、火床は見ておきたかったなぁ。
下り坂が続くのでペースをあげて走る、銀閣寺のすぐ裏手なのにこんなに本格的な森があるなんて。
波切不動尊の石仏に武運を祈り、霊鑑寺まで降りてくると、哲学の道付近の観光地に着いた。
トレイルランニングの格好はちょっと恥ずかしいぐらいの観光客の数、ゴールデンウィークの京都だからね。
哲学の道から銀閣寺へ、白川通のサークルKで休憩を取りつつ、日本バプテスト病院まで。
京都一周トレイルの最難関・比叡山延暦寺越えを前にして、ますます焦る僕。
すでに2時、予定よりも2時間遅れだなぁ、スタートの寝坊と途中5回のコースアウトが響いた。
伏見稲荷から銀閣寺から18kmほど、鞍馬寺までまだ半分なのに6時間が経過、太陽が落ちる7時まであと5時間。
足と体の疲れはまだ大丈夫だけど、時間が足りなくて鞍馬寺までは行けないかもしれないな・・・。
比叡山延暦寺か大原で終わりにしないといけなくなるかも、と弱気になった頃。
日本バプテスト病院から大山祇神社へ、沢沿いの登山口という雰囲気。
比叡山延暦寺に興味がある、京都からすぐの距離なのに戦国時代は独立した勢力だった。
距離感や地形を肌で感じれば、何か分かるものがあるだろう、と楽しみにしていた。
標高800m級の比叡山一帯を登って、また大原で降りるのだから京都一周トレイルでもキツいコースなのですが。
比叡山ケーブル駅まで約2時間、無心で歩き通した。
途中は登山そのもので何も写真に残したいものもなく、無名の石仏が迎えてくれたりもしたが、中難度の山登りそのもの。
ふと気づけば京都の街並みが眼下に、都を見下ろすとは大したポジションだよ、比叡山。
深い山林、もはや都とは別世界ね、近くて遠い。
閉鎖されたスキー場、この周辺から空気が変わってきた気がする。
文化の香りが、非日常の匂いが、下の写真のトレイルに顕著なのだが、カメラに撮りたくなる美しい気配。
18:00からの暗闇到来まであと2時間、鞍馬寺までは無理だ。
比叡山延暦寺からバスで帰るか、大原まで山を下りたところで終わりにするか、行けるところまで行こう。
比叡山延暦寺、以前に車で来たときと違うものを今日は感じた。
一言でいうならパワースポット、修行僧たちの特別な気配。
夕方になり人気も少なくなっていた比叡山延暦寺付近を歩けば、世俗を離れた空気が強い。
通過するだけでは惜しくて、もっと時間をかけて写真を撮りたいなぁ、紅葉の頃かなぁ、とつくづく。
なるほど、地理的には近くても、都とは別物だね。
こんな山城に多くの僧兵がいて、宗教という強い絆で固まられては手強い勢力だ、これが比叡山延暦寺か。
比叡山延暦寺を満喫した後からが勝負だった。
せめて大原まで暗くなる前にたどり着きたい、それにはここからの山下りを本気のスピードでしなければ。
伏見稲荷から30km近く動いてきたが、足に重い痛みもなく、まだ平地を走れる。
横川中堂まで一息に走り、仰木峠手前の急な登坂に息を切らしつつ、先を急ぐ。
仰木峠を18:00前に通過、ボーイスカウト道を下り、林道から大原へ。
大原の優しい田園風景が、時を急ぎ続けた僕を迎えてくれた、京都一周トレイルランニングのゴールの時。
伏見稲荷から大原までは34kmだけど、コースアウトを3km以上した僕にとっては37kmの目的地ということで。
朝8:00に伏見稲荷をスタートして、18:30に大原。
結局、登坂/下坂が多くて全体の1/3も走っていない気がするよ、しかし体は元気でまだ10kmぐらいは動けそう。
やはりスタートの遅さと、途中のロスタイムが悔やまれる、鞍馬寺までは行けたなぁ。
途中、何人かの人たちに話しかけられたが、「伏見稲荷から大原まで走ります」と言うと、みんなびっくりしていた。
それも分かる気がする、とんでもない距離だからね。
京都一周トレイルランニングは良い刺激となりました、ロマンに溢れるコースで、長丁場でも飽きることがない。
いにしえの旅人たちもこんな移動をしていたのだろう、と考えると僕の趣向に合って。
京都の街中だけを歩いていては知ることもない地理感覚や距離感覚が分かり、京都がより身近なものに。
37才・37km、一生忘れられない一日になったなぁ。