御嶽山の写真、噴火前の活火山の証拠、一眼レフ撮影
夏休みの冒険が足りなかったようだ。
木曽駒ケ岳のロープウェイ簡単登山に満足できず、ガシガシ登る山を求めていた。
前夜、自宅から3時間かけて御嶽山の王滝口登山道の駐車場に夜到着。
下界は毎日35℃の猛暑なのに、山中の夜中は寒くて何度も目を覚ますほど。
朝6時に登り始めると、朝日に照らし出される御嶽山も、足元を取り巻く雲海もキレイ。
それにしてもさすがは信仰の山、そして昨今の登山ブーム。
他の山にはあり得ないほど、多くの人たちが、朝早くから登っている。
最近、肉体改造をしている僕の体は上手く動いて、先の人たちを抜いていく。
しかしキツイなぁ、さすがに標高差900mだから、決して楽な登山道ではない。
とはいえ登りやすいのが御嶽山の特徴だと思う。
特にこの王滝口登山道は、視界が開けていて常に山頂も駐車場も見えている。
まっすぐ一本道、割合整備されていて、岩山ボコボコの過酷な登山道ではないし。
(これ↑の湯気は活火山の証、今も火山活動している部分です)
日が昇ると暑くなってきて、みんなはヒーヒー言いながら登り、僕も精一杯のアプローチ。
そんな僕をなんと2人の若者が抜いていったではないか!
スピードキングを自称していた僕が抜かされるとは、もう33歳、僕も若くはない・・・。
2時間15分で標高3067mの剣が峰山頂に到着。
以前も登ったはずが、登山道を別にすると、まるで違う山に登った感覚。
山頂からの景色、PLフィルターを通した青空・白雲色の素晴らしさ、爽やかな気温と湿度。
わざわざ持ってきた望遠レンズに換えて、しばらく心地よい写真タイムだよ。
御嶽山は山岳信仰の聖地、頂上では白衣を着た信者の方が祈願をしている。
僕にとっても山登りは精神修行の場、根気強く・真っ直ぐな心を求めて登る。
お鉢めぐりのコースを歩いて、3,000mの景色をゆっくりと楽しむ。
今日のファッションはこちら↓です、North Faceのハットを新調したので持ってきました。
段々と本物グッズが揃ってきていて、c3fitのサポートロングタイツはもちろん、
トレイルラン用の軽量リュックSHIRIKE MIDに、ミッドカットの登山靴、
結局はNorth Faceブランドばかりになっていく僕。
十代にアメリカにいた頃はNorth Faceは高くて買えなかったけど、
大人になった今は好きなファッションができて幸せなこと。
二の池と残雪、この写真を撮るために御嶽山に来たと言っても過言ではない。
この美しい場面に近付いて、一眼レフを構えて写真を撮ることの贅沢。
残雪の上を歩く野鳥とは、なんだかこれも贅沢な一枚なんだよね。
溶け出す氷河の滴、近寄ればそのポタポタという音が聴けるから、
しばらく石に腰かけてその音を楽しむ。
突き抜けるようなブルー、二の池の色はまるで宝石。
遠目から二の池+氷河を撮れば、その色の対比は他所にはない詩的ポイント。
下りはだいぶスピードをあげて、1時間ちょっとで駐車場まで着いた。
ヒザや腿に負担が強かったな、時間をかけてゆっくり下ったほうがいい。
御嶽山王滝口登山道、登りやすく、美しいものを幾つも備えた、愛すべき登山コース。
2009年4月25日
冒険が僕の糧になるらしい
十代の頃に体験したアメリカ国立公園の大冒険が、今の僕のタフネスのベースになっている
3年前に御嶽山に登った時の経験も、また僕を大きくさせてくれた
雪山登山の設備がなくて途中挫折したあの時の悔しい思い出、
それからNIKON-D90を持ったことで雪山の写真を撮りたい、っていう思いに駆り立てられて、また御嶽山に登ろうと思った
今度は準備も完璧だよ、カジタックスのアイゼンLXT12やNIKEのサングラス、
車内泊用に寝袋だけじゃなくて布団まで、この3年間のノウハウを総結集して、いざ、御嶽山へ
前日の夕方から車を走らせたら、途中の峠が道路封鎖と知ってびっくり
思いがけず遠回りになってしまい、これなら高速を使わないで普通に行った方が早かったから、なんだか最初から失敗だったなぁ
41号線から濁河温泉へと向かう道になると、それは誰も通らない真っ暗な道
ハイビーム全開で細い山道を走るのは、不気味な恐怖感がある
山中だから夜はまるで真冬の寒さ、それだからか途中で見た星空は美しかったなぁ
御嶽山濁河温泉登山口前の駐車場に着いたのが夜10時で、すぐに寝た
翌朝5時半に起きると、ついに見えました、冠雪の御嶽山
6時に出発すると、3年前と同じく小坂口の最初から登山道は雪に閉ざされている
朝の元気で黙々と歩いていると、ふと前方に動く大きな影
それはあっという間に走り去ってしまったが、間違いなく野生のカモシカだった
雪道は容赦なく続き、そのうち太陽も射してくるからサングラスと帽子で防備
試してみようとカジタックスのアイゼンを装着してみると、これがなかなか難しい
ちゃんと事前に履く練習してこればよかった!
付けて歩くとすぐに外れてしまって、何度やり直したか分からないぐらいで、
呼吸を整える時間つぶしのつもりが、だいぶ時間を取られてしまった
それはともかく、ティンバーランドのブーツだけで歩くのとだいぶ違う!
何が違うって、ブーツだとつま先に力を入れて一歩一歩進まないといけないのに、
アイゼンがあれば体重だけでしっかり足の場所をキープできるのだから
良いことは良いが、慣れていないからなにしろすぐにブーツから外れてしまう
何回も何回も付け直して、一体どこがちょうど良いポジションなのかが分からない
そうこう苦戦している間にも森林限界に着いていたみたい
弁当を食べるが、昨夜の寒い気温に冷やされた冷や飯のまずさは、ちょっと耐えがたい
おかずは食べれても、ご飯だけは残しちゃうもんなぁ
代わりにアーモンドチョコやベビースターで栄養補給
汗はかくものの、ポカリスウェットをガブ飲みするほど喉は乾かない
問題児はいつも足元のアイゼンとブーツで、スムーズに登る効果があるのに、外れちゃって時間ばっかり取られる
どの山も、森林限界は美しいものだ
だいたい、「森林限界」っていう言葉自体が美しいよね
たどり着いた限界には美学があって、それでも頑張っている滅びの木と、一線を画す気候の厳しさのせめぎ合い、
そんなものが森林限界一帯には漂っている
さぁ、いよいよ雪山登山の始まり
一歩足を踏み外したが最期、ゲレンデを真っ逆さまに転がってしまって命がない?
そんな緊張感の中で、アイゼンをしっかりと雪道に打ち付ける
辛い辛い、この垂直登山が何よりも辛い厳しい
10歩歩いては呼吸を整え、永遠に続くかのような雪山を見上げる
しかもバランスを崩すわけにはいかない緊張感があるし、道はひたすら急角度の登りだし
途中からは危ない雪道じゃなくて、草や岩の道をアイゼンなしで登った方が安全になったから、岩から岩へと伝って頂上を目指す
そのうち気付かないうちに天辺に来ていたみたい、目の前でバサッ、という音がしてびっくりしたら、鳥が飛び去っていく音だった
ん?と思ってよく見ると、目の前には一羽の鳥が歩いていて、1mもない距離なのにそいつは全然飛び去る気配がない
それからその場所が長く続いた急傾斜の雪道の終わりで、僕はようやく2,800mの飛騨山頂に着いたのでした
いやぁ、おかしいよ
こんなに近づいたのに飛んで逃げようとしない鳥なんているの?
素早くカメラを取り出してシャッターを切ってもやはり鳥は逃げないし、
ちょっと近付いても、なんかのんびりとそいつは歩いて進むだけ、まるで緊張感がない
ひょっとして?
僕は思った、あれがあの有名な「雷鳥 ライチョウ」じゃないかって
飛ばない鳥、高地にしか住まない平和な鳥、確か岐阜県や長野県の県鳥だよね
いや、そうだと確信したよ、もっと近付いても全然飛び立とうとはしないし
それで追っていたら、岩陰からもう一羽出てきてびっくりだよ
雷鳥が二羽、二羽も!
カメラマン冥利に尽きる被写体じゃないか!
高倍率レンズじゃないのが悔しいな、AF-S DX NIKKOR 16-85mmF3.5-5.6G ED VR
だから、85mmが最大だもん
これで250mmぐらいあれば、どアップの雷鳥が撮れたのに
しばらく二羽と一緒に歩いて、彼らの写真を撮りまくり
最初に飛び去ったのも雷鳥なんだろうな、あの一羽だけが飛べるなんて不思議
しかしいずれにしろ、雷鳥に三羽も逢えるなんて、最高の幸運だ
3年前はアイゼンがなかったし、今回よりも積雪が多かったからこの飛騨山頂が限度だった
今回は雪が薄いな、と最初から感じていた
地球温暖化の明確な影響はこういうところに現れるのだろう
特に頂上だとアイゼンをつけないほうが歩きやすいぐらいで、風と太陽の力を感じる
風の向きになびいている氷の柱、奇才アートを感じるその形状
五ノ池小屋は雪に閉ざされている、神社や標識さえもが氷柱になっていて、それを僕は美しいと感じていたよ
氷の中で、本来の姿が凍結してしまったような
これ↑って、狛犬らしいけど、どこが狛犬だか分かるかなぁ?
どこまで行こうかと考えた
目の前に見えている背の高い岳、あのトップに登ればもう文句なしでしょう
どうせこの道に戻ってくるから重い荷物は置いてしまおう
大丈夫、今日見かけたのは二人のスキーヤーだけで、人間なんて全然いない
カメラとアイゼンだけを持って、僕はさらに上へ、上へと向かう
それも辛い登り道、足元は岩を狙って、ロッククライミングの要領で見かける山肌の傾斜が、
雪に白くなった斜め具合が、なんとも言えず美しい、素晴らしい
それはたまらない雪山の美、夢中になってシャッターを切る
しばらく登ると摩利支天山の頂上、標高2,959m
さらにどこかへ行こうかと眺めてみると、危ないな、どこへ行くのにも雪の細い峰だ。
御嶽山頂へは行きたかったが、もうここで充分だろう、今日はこれまで
僕はやったよ、3年前の御嶽山登山ではできなかったことを今、実現した
嬉しさでセルフタイマーを使って自分を撮って、この2,959mからのビューをカメラに一杯写してみる
南アルプスが、上高地方面の山々が頭に雪を被っているのはもちろん素敵、
眼下に見下ろす濁河温泉の小さな集落を見るのも気分はいいし、
御嶽山頂とほぼ同じ視線の高さだから、これより上はないのが素敵
今日一日、天気は常に快晴、風もなく、まさに最高の登山日和
しばらくぼーっと考え事をしていて、携帯電話を見るとなんと着信履歴あり
おいおい、御嶽山の頂上だよ、なんで電波が届くのか!
さぁ、下山してゆっくり写真撮りつつ、濁河温泉に入って帰ろう
意を決して下山を始め、飛騨山頂付近で最後の雷鳥探しをしても姿は見当たらず
もういいや、と危険な傾斜を慎重に下ることおよそ半分ぐらい、ふと息をついて写真を撮ろうと思ったら、なんとカメラがない!!
焦ったよ、荷物全部探してもカメラだけがないじゃないか
おいおい、こんな致命的な忘れ物ってないよ、カメラを失くして
今日こうして登って来た意味がなくなっちゃうじゃないか
これはノーチョイスで戻るしかないでしょう、荷物を全部置いてまたあの厳しい傾斜の道を登る、登る
焦っていた、カメラマンがカメラを失くしてどうするのか、まるで意味のないことだし、
見つからなかったらどうしよう・・・と考えると本当に参っていた
飛騨山頂まで死にそうになりながら戻って、小屋の方向へ歩いていると、あったよ、僕のカメラ、NIKON-D90が!
そういえば足をずっぽりと深い雪に取られて、ゆっくり這いあがった時があった
その時に、音もなくカメラだけを取り残していたみたい、こんな偶然なんてないよ
それはともかく最高の仲間に再会できて心から嬉しく思った
ゆっくりと岩肌を下っていたら、またも思いがけない再会、あの雷鳥さんだ
ありがとう、カメラを落として良かったかも?
雷鳥を撮っていたら、岩陰から出てくるじゃないか、なんと三羽とも一緒の場所にいたんだから
今回は飛ばれることもなく、三羽ともを写真に写して、ちょっと追いかけて
上手く三羽が一緒に撮れるように狙ってみて、カメラに収める
どうだい、こんな幸運ってないよ、いつか雷鳥に逢いたいとは思っていたけど、
この御嶽山では全く期待していなかったもん、朝のカモシカに続いて三羽の雷鳥なんて、3年前とは比べ物にならない充実ぶり
(↑ちょっと上手く撮れてないけど、確かに三羽を同時に撮っているでしょ)
それで僕は雷鳥タイム
僕が動かなければ、すぐにそこにいる三羽の雷鳥も微動もしないで景色を見ている
一緒にゆっくりと風を感じて、僕も四羽目の雷鳥になるべく、ただ静かに
雷鳥タイムが終わると、またカメラマンらしく雷鳥を追ってはシャッターを切る
贅沢な時間だと思ったよ、本当にもっと高倍率レンズがあれば・・・と思った
雷鳥にバイバイして、一息に雪斜面を下る
日中の温かさに表面が溶けだしていて、朝とは全然歩きやすさが違う
結構なスピードで歩けるようになって、スキーをしている気分で下る
それも美しい景色だったよ、誰もいない白いゲレンデを、僕だけが歩いている
濁河温泉には間に合わないと思った
その時点でもう3時だったから、普通に下るとちょうど終わっている時間で、あとは下呂温泉に入って帰ろうかな、とあきらめていた
足の疲れ、とくに膝の疲労だね、だいぶ力がこめられないぐらいまで弱っていたけど、
最後の力を振り絞って、雪の下り道をトレイルラン気味に下る
疲れていた、途中で力がなくなって雪に座り込んだ時、僕は感じたね
あぁ、山が、森が溶けだしている
耳に入ってくるのは弱い風の音、たまに鳥の音、あとは溶けて落ちてくる水や氷の水滴
とりわけ水滴の音が美しくて、それはまさに御嶽山の冬が溶けだしている音なのだから
間に合うか?と思った
すごいペースで下っていたから、このまま順調に下りると濁河温泉にギリギリ入れるかもしれない
そう考えるとますますペースが上がって、一心不乱に朝来た道を駆け降りたのだった
ほら、間に合った
5時の営業終了のところ、4時15分には小坂口の開始点に着く偉業を遂げた僕、
疲労困憊の身体を濁河温泉に浸からせていると、幸せだと思った
ハードなトレイルだったが、無事だったし、雷鳥にも逢えて、美しい風景をたくさんシャッターに切った
濁河温泉にも入れたし、あとは何か美味しいものでも食べて帰ろう
山の道すがら、御嶽山が姿を現すとあれだよ、あの厳しい場所に、美しい場所に僕はついさっきまで雷鳥と一緒に佇んでいたんだな
帰り道をドライブしていたら、あまりの疲れ方に気持ち悪くなった
1時間ぐらい横になっていたら、目を覚ましてみると辺りはもう薄闇、肌寒いどころか、立派な寒さ
月が出ていたよ、ミラー越しに眺めながら色々考え事をして、それも素敵な時間だった
結局家まで4時間もかかった
お疲れ様、最高の冒険になったが、こんな辛い時間だったのにあまり目立った写真の成果がなかったように思える
雪山は美しいが、もう春の雪山はいいだろう、他の美を探すことに時間を使おう
3年前の忘れ物を一気に取り返した確信あり
最高の冒険、最高の詩的
【所要時間】
6:10 スタート ~ (途中、アイゼン装着でもたつく) ~ 7:40 湯の花
~ 8:10 のぞき岩 ~ 9:15 森林限界 ~ 11:15 飛騨頂上
~ 13:00 摩利支天山頂上 ~ 15:15 森林限界 ~ 16:15 下山