直前割引ホテル、お得な最安値宿泊料金でインターネット予約

今思うと、直前割引ホテルが日本に定着したのは、東京のホテルラッシュが契機。

2008-2010の間に、東京都内には幾つのホテルがNEW OPENしただろう。

しかも4つ星・5つ星のラクジュアリーホテルばかり、

海外の有名ホテルブランドチェーンが一気に東京に進出してきたことは君の記憶にも残っているだろう。

それによって東京のホテル供給は本来の需要よりも多くなった。

図らずに起きた、2008年秋からの世界的な経済不況が、

ホテル宿泊客の需要を冷え込ませ、ホテルの供給量過多となる事態を招いた。

さぁ、どうする、OPENしたてのブランドチェーンホテルたち。

彼らの答えは一様に同じで、既存のディスカウントレートを拡大し、

新顧客を取り込むことにまっしぐらになった。

その代表的なディスカウントレートが、ホテル直前割引

早期予約割引制度はあったけど、そんな早くから旅行計画を立てられる人ばかりではなく、

不況下では旅行者の絶対数が冷え込み、代わりに期待できるのは突発の出張者。

急に決まる出張者、旅行者をどう取り込むかが、ホテルの次の狙いとなって、

それには直前割引ホテルという新しいインパクトを出すことで、

宿泊客をより広く囲い込みできると、ホテルは知恵を付けた。

それは知恵っていうか、本当はホテルもそんな割引ばかりをしたくはなかったけど、

背に腹は抱えられない経済状況下で、渋々ではあるものの、

直前割引という新商品を提供することにしたのが本音。

値下げ競争だと、結局は体力勝負になるから、

ホテル同士も横目で見合っては少しずつ、少しずつ直前割引を解禁していた。

「直前割引なら、○○ホテル」っていう明るいイメージは欲しいけど、

利益率の悪い直前割引予約で部屋が埋まるのも困る。

ただ、恐れるあまり直前割引の客が逃げて、空室になってはホテルの存続にも支障が出る。

ホテル側の苦悩を後押ししたのは、顧客からのリクエストだった。

「お宅のホテルは直前予約割引ないの?」

「直前予約があるなら泊まりますが」

「直前予約もないホテルは問題外」

一部だったそんな声が徐々に高まる中、いよいよホテルも腹を決め、

直前割引予約を前面に押し出すセールスを選択するところが出始めた。

結果として、直前割引ホテルの増加により、東京のホテル需要量は格段に向上し、

ホテルの供給量上限には届かないものの、多くのホテルが潤うことになった。

それは同時に、宿泊客側も直前割引予約でホテルに泊まることができる

という利益を享受することになったのだから、両者万々歳と呼んでもよいのではないかな。

直前割引ホテル1.jpg

当日割引のホテルや宿を扱っている、旅行会社や旅行代理店を探しているのでしょう?

だったら見ていって、聞いていって。

当日割引に情熱を傾けた旅行会社や旅行代理店があったという物語だから。

その昔、当日割引のホテルを売りまくろうとした旅行会社があった。

この難しさはなかなか伝わらないだろうな。

宿泊業界の商品は、その日に売れ残ってしまったら水の泡となってしまうもの。

他の業界の商品のように、在庫を抱えることができないんだよ。

今日は宿泊客が半分しか埋まらなかったら、もう半分は空室になっちゃった。

でも明日は宿泊客で満室だから、今日の空室分を明日に回しちゃおう。

・・・ってことができないのは分かるね?

ホテルや宿のキャパシティは毎日一定で、それを増減させることはできない。

魚市場のマグロも賞味期限が限られていて、油断すると腐ってダメになってしまう。

だけど現代なら冷凍という手段によってマグロの在庫を抱えることができる。

宿泊商品はそうはいかないよ、いくら技術革新が起ころうとも、

今夜宿泊してくれなかったらお金は入ってこないし、不泊分を在庫として明日に回すことができない。

そんな水モノ商品のホテルや宿の宿泊商品を取り扱うって、とっても難しいこと。

それに挑んだ旅行会社のチャレンジャーがいて、

彼らはインターネット上で当日割引のホテルだけを専門で販売しようとした。

結果は上手くいかなくて、あっという間にその事業から撤退したものの、

彼らが切り開いた当日割引の宿泊というジャンルは、旅行会社にインパクトを与えた。

そんな売り方があるのかって、そんな商品で宿泊者へ割引を還元しつつ、

水の泡と消えそうな直前の空室を客で埋めることができるのかって、

それは旅行会社の目を覚ますような販売方法だった。

今ではどうだい、楽天トラベルなどの宿泊予約サイトで

当日の宿を予約しようとする際、直前割引料金が設定されていることがある。

当日割引専門で扱う旅行会社の難しさで、それだけの宿泊予約サイトはないけど、

通常の宿泊予約との複合型として、

当日割引の旅行会社や旅行代理店は継続しているじゃないか。

そうだな、この便利な当日割引の旅行会社とか旅行代理店の予約サイトを使わない手はないよ。

早く予約すればお得なレート、早期割引料金とか早割プランとか呼ばれるアレを英語では何て言う?

答えは「Early Bird Special Discount Rate」なのだが、どうして Bird 鳥 が使われるのか分からなかった。

- The early bird catches the worm - 直訳すれば「早起きの鳥は虫を捕まえられる」。

日本語で近いニュアンスは「早起きは三文の得」のことわざですが、三文は100円ぐらいの価値なんですよね。。。

早起きしても100円しかもらえないのなら、私はむしろ遅起きすることでしょう。

「先駆者利益」だと大袈裟なので、意訳としては「早い者勝ち」といったところ。

ホテルで言うところのEarly Birdは、これすなわち早割のこと。

話は逸れるが、夏のゴルフの早朝プレイもEarly Birdと呼ばれ、これは日中の暑さを避けるための術。

もっと話題は飛ぶが、Early Birdの対極はNight Owl(夜のふくろう)で、夜型人間のこと。

すると、ホテルの割引料金に戻ると、早期割引はEarly Birdで、直前割引はNight Owlとなるのか。

いや、Night Owlとは言わないな、ニュアンスとしては「Night Owl=だらしない人」って感じで悪い印象。

直前割引はLast Minutesという英語が当てはまる。

鳥をイメージキャラクターにしたホテルを作るのなら、

早起きで凛々しく飛ぶ小鳥で、お得な早割料金を表現しよう。

宿泊直前まで予約しなかったさぼりフクロウは、割引のない正規料金なのかな。

いいえ、早割よりはメリット少ないけど、ラッキーパンチの直前割引料金を設定してあげなくちゃ。

いかに直前予約に対応できるホテルになるか。
それが私のホテルチェーンビジネスのキーになることは分かっていた。
奈良という観光都市に低価格で清潔なホテルを幾つも展開する、その最初には世界や日本につながる特別な武器はない。
だから、自分たちで作れる強みを武器に、ホテルを拡大していくしかないのだ。

私のホテルの武器とは何か。
わずか15のホテル、200名たらずの社員たち。
特別なブランドはないし、強力な提携先があるわけでも、頼れる後ろ盾があるわけでもない。
あるのは社長である私をトップに、一丸となって動ける身軽な体制と、やる気に満ち溢れた社員たち。

そもそも、ホテルの武器とは何かを考えてみたとき、IT予約管理システムだと気が付いた。
CRS(Computer Reservation System)と呼ばれたものは、
1970年代にまずは航空券の予約発券から始まって、航空会社や旅行会社が導入し、
次第にそれがレンタカーや列車、そしてホテルの予約もできるようになった。
旅行業界のシステムは、いつしか世界をまたがっても予約できるようになり、
それはGDS(Global Distribution System)と呼ばれ、急速にITが導入されたことで、
旅行業界のみならず、航空業界も、宿泊業界も効率化されていった。

ホテルというと、人力イメージが強いが、70年代後半にはフロントにシステムが導入され、
当日の宿泊の部屋割が自動化されている。
それまでは、「あの部屋が一番良いから、その日の一番良い宿泊客に提供しよう」
「あんな部屋に泊めたら文句言われるから、最後の最後まで残しておこう」
というスタッフのクセで、ホテルの部屋の痛み具合がまちまちで、ホテル全体の改修のめどが立ちにくかった。
ホテルの手間だって、宿泊予約システムによって簡素化されている。

顕著な例が、請求書などの作成作業だな。
それまでは夜にチェックインを受け付けてから翌朝のチェックアウトまで、
深夜の時間帯が一番忙しい事務処理時間だったのに、宿泊予約管理システムによって
一気に簡素化され、その分低コストができるようになったから、一時のホテル急増現状につながったと思う。
そう、ホテルの武器はIT、コンピューターによる宿泊予約システム。

それによって、宿泊客には分かりやすい予約体制を提供できるし、
ホテル側としても最少人員での管理ができるようになり、そこで浮いた分だけ、
安価な宿泊料金を顧客に提供することができるのだから。
いかに直前予約に対応できるホテルにしよう。
あるべき姿は、いつでも、宿泊客が、インターネット上で、直前予約割引を、簡単に予約できるっていうことだ。

直前予約のホテルというが、経営者の観点から言わせてもらうと、
ホテルは労働者が多く携わり、労働者一人あたりの効率化改善がしにくい、という問題点がある。
部屋数×単価の上限があり、爆発的な大ヒットが生まれない条件下、ホテル売上額の上限は毎日一定で。
つまり、原価低減がしにくく、売上増も見込まれない業種であることから、
利益が出し難いのでは?と推測される二大要素がしっかりはまっている、世にも難しい商売。

さぁ、そんな愚痴を言っていてもはじまらないな、まずはホテル経営を
数字の観点でなんとか見つめてみることにしようじゃないか。
直前予約のホテルとして生まれ変わるためには、必要な手続きだからね。
全客室の売上を、客室数と稼働率でみる「Revenue per available room(Rev PAR)」が
一番いい見方になる、というのはホテル業界の先輩たちから学んだ知恵だ。
このリベニュー・イールドマネージメントは、航空機の採算性を見極める時と一緒で、
販売可能な部屋を残さず、なるべく高い値段で販売できるか、に重点を置いたものだ。

この数字を改善するためには、オーバーブッキングやアップフレードなど、
スタッフのその場の判断が重要視され、彼ら予約スタッフに状況判断で
安い料金を提供する権利もなければ、直前割引ホテルの予約客をゲットすることはできない。
つまり、権限委譲が必要とされていて、直前割引はその彼らの権限の中で
直前割引という手段をぶら下げて、通り過ぎる宿泊客を獲得するのが望ましいのだ。
直前割引のインターネット販売は、単価を下げるだけの悪者ではない。

電話では、あらゆる販売制限をコントロールできないが、
ネットならその裏に様々な条件を潜ませることができるから、
結果として適正価格維持に大きく貢献しているのが、直前割引などのネット予約なのだ。
旅行会社を経由すると10%ぐらいの手数料をとられてしまうから、もうけが弱まってしまう。
その分、ネットでの直前予約なら人件費がかからず安いし、リアルタイムで、
リベニューマネージメントをしながらネット販売ができる。
これらのことを総合的に考えれば、ますますネットでの直前予約ホテルが、
ホテル経営の最良かつ最高の管理ツールだと見てくるなぁ。

当日割引のホテルを専門に取扱う旅行会社の会がある。
ホテル・旅館など宿泊業界の活性化と、旅行会社の存在意義をPRしようと、
当日割引のホテル予約に強い旅行会社ばかりが集まる会。
そこで私は県別にChief Discount Officer - ”CDO制度”を提唱して、
自らはまず愛知県の当日割引ホテルを担当することにした。

Chief Discount Officerなんて聞いたことがないって?
それはそうでしょうね、だって私が勝手につくった言葉なのですから。
担当する県内のホテルに声をかけ、CDOの会の趣旨を説明し、
賛同いただけたホテルには当日割引制度を導入してもらう。
「愛知県3大当日割引名所」を立ち上げるべく活動している私の企画は、着実に進んでいた。
何かというと、当日割引のホテルだけでは活動が弱いので、
もっと地域が協力できる体制をとるべく、つまりは県内により多くの観光客をもたらすべく、
当日割引に特化した県内の観光名所ベスト3をつくるということ。

なにしろ、ホテル宿泊客は宿泊したホテルにだけお金を落とすのではなく、
滞在中には食事だってとるし、お土産だって買えば、近くの観光名所で遊ぶわけで、
ホテル代以外のお金が地域に落ちることになる。
それを地域発展・観光名所の再振興策として取扱い、現在、観光客の誘致に
苦慮している観光名所にもう一度スポットライトを浴びてもらおうという計画だ。
この観光名所は、近くのホテルが当日割引の予約を導入しているからお得です、
だからみなさん来てくださーい、という呼びかけをしようと、ホテルと地域に誘いの声をかけている。
宿泊客のみなさんにより分かりやすく、より楽しい仕組みを、
と思って私が考えたのは、ベストランキング形式。

ズバリ、愛知県の当日割引ホテルの、ベスト3はここです!というものを売り出せば、
「ベスト3なんだから、まぁそこに行っておけば失敗ないでしょ」
という安心感を与えることができるはず。
選択肢が20も30もあっても、迷ってどれがいいのか選べないのが人間だから、
ベストランキングで明確に見せる方法もアリでしょう。
このサイトでは、その当日割引ホテルのベスト3を選ぶにあたってのエピソードを載せていくつもりです。
当日割引のホテルの素晴らしさ・楽しさが、より多くの方に伝わりますように。

そうか、当日割引ホテルならば、確実に宿泊料金をディスカウントできる。
ちょっと勉強して当日割引ホテルの予約システムをマスターしてしまえば、
観光旅行の予算をセーブしつつ、ちびちび何度も旅行を楽しめるテクニックになった。
Listen, Don't want to know the secret ?

当日割引ホテルの宿泊予約ができる旅行代理店のサイトには、指定条件モードがある。
その日の朝、「私は新宿駅付近で、8000円ぐらいのシングルルーム探してます」
という条件をインプットしておくと、あらかじめ登録してある携帯電話のアドレスに
その条件に合う直前割引ホテルの候補が、どんどん送られてくるんだ。

今まで、当日割引って、自分が色々なホテルに空室を確認するという手間を経て
ようやく獲得できる当日割引料金、っていうイメージが強かった。
しかしIT技術の向上は、逆転の発想を当日割引ホテルに与えてくれている。
直前割引料金を設定したホテルが、顧客に対してセールスをリアルタイムにかけてくるのだ。

なんとも以外、当日割引料金のホテルを、受け身の立ち位置で、選ぶことができるんだ。
それならば当日割引ホテル探しにも時間も気力もかけずに立ち向かえるじゃないか。
みんなはただ知らないだけ、こんなに便利な当日割引ホテル予約システムを知らないだけ。

直前割引宿のお得感をもっと多くの旅行者に知ってもらおうと、宣伝中の私。
コンピューターによる宿泊者予約管理システムが向上した昨今の宿では、
憧れの稼働率100%を実現させるためのアイディアが生まれている。

それは、キャンセル待ちを受け付け、ついでに直前割引料金を提供しちゃうこと。
今まで宿にキャンセル待ちなんていう感覚はなかった。
だから稼働率はどう頑張っても95%前後で、オーバーブッキングなんて宿はタブー。
前日のキャンセル客、当日のキャンセル客がでると、宿の稼働率は数字を下げる一方。

でもね直前割引宿さん、あなたが来てくれたから、キャンセル待ちの宿泊客が
そのキャンセル宿泊者の突然の穴を埋めてくれて、稼働率は限りなく100%に近付くの。
なにしろキャンセル待ちだから、宿泊客の皆さんにはリスキーで敬遠されちゃう。
でも直前割引料金でウチの宿をご利用くださいませ、ということができれば、
最悪、宿泊客も急に宿に泊まれるようになっても、当日割引の宿に悪い印象は持たないから。

重なる宿の林立、価格競争で、どの宿も体力的には疲弊しきっているのが現状。
このキャンセル待ちの直前割引宿システムは、わずかな金額インパクトしか与えないけど、
その金額がギリギリの宿収支を改善させるための新しいワザなの。
直前割引宿、キャンセル待ちを上手にハンドリングする、宿の奥の手だから。

直前予約専門のホテルとして、思いきった割引を出すのがウチのホテルの目玉。
そのために、ウチは直前割引以上に思い切った原価低減をしている。
大体、ホテルでは部屋数のキャパシティが決まっていて、
今日は100室売れるのに明日は150室売れる、という変動要素は見当たらない。
今月はホテルの部屋数の3倍以上の宿泊実績という大ヒットとなりました!
というワケにはいかないし、部屋が100室ならば毎日100室が上限という限定条件がある。

飛行機の座席販売と一緒で、いかに稼働率を100%近くで維持させるか、ということがビジネス上の勝負になっている。
だったらどうやって利益を残す?
販売金額自体は頑張っても固定なのだから、あとはいかに原価低減するかで、利益の残り方が違ってくる。

原価低減の鬼。
わたしがそうホテル仲間内で呼ばれて久しいが、ホテルが生き延びるためには
必要不可欠なことだし、原価低減あっての、直前予約割引料金の提供なのだ。
宿泊部門の原価は3割、レストラン部門は3割、宴会部門は4割が原価になる。
ホテルの部屋自体は初期投資額がハンパなく大きいし、
原価償却にかかるコストと時間が大きく、利益率自体が良くとも、なかなかうまく儲かる商売ではない。

レストランは利益に対して人件費が35%ぐらいはかかるから、最終的な利益率は20%前後になる。
専門技術のあるスタッフを雇用しなくてはならないというデメリットがある一方、
いくら稼げるという天井はないし、
回転が速くて初期投資分を1年もたたずに回収してしまうというプラス面もある。

宴会部門も人件費をさっぴけば、最終的な利益率として30%前後は残す計算になる。
ポイントは、全ての分野における徹底的な原価低減しかない。
それが実現できれば、直前予約割引料金も世に出すことができる。

象徴的な例として、ホテル内は最初から全面禁煙にしてあり、
喫煙や分煙に関わるあらゆるコストを最初から削っている。
あらゆる物に一段の原価低減を目標として掲げ、
3年後には減価の3割を低減できていることを必須目標として、ホテル全部門で邁進している。
一切合切、機械でも対応できるものは機械に任せて人件費を削ってみるのは当たり前。

でも、チェックインとチェックアウトのフロントだけには、必ず人を残そうじゃないか。
そこも機械化させようと思うとできるけど、そこだけは聖域として、ヒューマンリレーションシップを残すよ。
原価低減によって生み出されるホテルの直前予約割引料金、その裏のドラマを感じてくれたら。

私、当日割引ホテルには、甘美な呪縛があると思っているのよ。
宿泊業界って、装置産業。
施設に先行投資して、宿泊客を迎え入れる装置を準備してから、お客さんを呼びこむ。
怖いのは、売れなかったら即日不良在庫どころか、欠陥商品の汚名がつくこと。

商売のタネである装置を移動させることはできないよね。
それから、売れ残った在庫を翌日に回すこともできないのよ。

これが当日割引ホテルの呪縛かなぁ。
ギリギリ精一杯の商品性しかないのよ、特に在庫を持てないのが、安定的な商売としては欠陥。

私はマンション業界からの転職組なんだけど、
同じハコモノ商売でも、不動産ならいつか売れればそれで経営がなりたつのに。
何よ、当日割引ホテルって、どんだけ不安定で、どんだけリスクばかりの危うい商売?

でも、わたしは当日割引ホテルの甘美な香りに魅せられて転職してきたクチ。
逆に物理的なものにとらわれることなく、時間や体験という目に見えないもので、
商売を語ることができるって、なんだかセクシーって思うのは私だけかなぁ?

体験価値を提供する産業。
それって、特別な技能がなくモノつくりができない私のような人でも、
サービス精神さえあれば、魅力的な商品を宿泊客に提供できるってこと。

だから当日割引ホテルは止められないの。
ある種の魔力、当日割引ホテルには甘美な呪縛があるって、あなたも同調してくださる?

宿泊の当日割引には、不幸な生まれたちがあってね。
別に宿泊業界が好んで世に出した割引制度じゃないのに、
そうでもしないと宿泊客の減退に歯止めがかからなかったから、シブシブ当日割引の宿を宿泊客に開放した。

僕が差すのは、ワンボックスカーのこと。
それから、マンガ喫茶やネットカフェで一夜が過ごせること、カラオケボックスも同じね。
いわゆるラブホテルがキレイ化してきて、シティホテルや
ビジネスホテルとの境界線があいまいになってきていること。
ウィークリーマンション、マンスリーマンション、そこら辺もより世間に認知されてきた、っていうこと。

何が言いたいかって、パーソナルスペースを確保したままで
夜を過ごす方法が以前と比べて飛躍的に増えた、っていうことなんだよ。

何もホテルに宿泊する必要なんてない。
広いワンボックスカーだから、フルフラットにして、足をのんびりと伸ばしたまま眠れるし、しかもタダだし。
車がなくても、ネットカフェなら格安で朝まで場所借りられるし、シャワーだってあったりするし。

よっぽど外泊が多いなら、ホテル宿泊より、マンスリーマンションの方が安いし。
それでもあなたはホテル宿泊にこだわり続けるの?
よく分からないな、ホテル宿泊じゃなきゃならない理由を教えて?
ビジネスホテルが林立しているこの日本の都市部じゃ、
もう普通の宿泊客の需要は右肩下がりになっていて、
宿同士でパイの奪い合い、宿泊客の奪い合いが起きていたのだよ。
ビジネスホテル・シティホテル業界は疲弊し、疲労し、縮小していた。

そこに加えて、恐るべき外敵現れる。
「あの町で夜を過ごさないといけないけど、どうしよう?」
そんな人の前に選ばれようとする、候補が林立ですよ。
ちょっとの不便さを我慢すれば、究極の「コストゼロ」を誇る、車中泊ブーム。
1晩¥2,000でネットし放題、フリードリンク&シャワー付きの、ネットカフェ。
1晩¥7,800でシティホテル並み、もしくはそれよりキレイなラブホテル。
特に際立ったメリットがなく、逆に目立って割高なホテル宿泊は、どう立ち向かえばいい?

そんな不幸な立場にある宿泊業界は、シブシブながら新しい割引制度、
当日割引っていうモノを世の中に送り込んで、減りつつあるパイの確保をはかったのだよ。
「宿泊日の当日でも大幅な割引があるなら、まぁ、ホテルに泊まっておきますか」
望まれて生まれてきた子じゃないよ、宿泊の当日割引宿って。
まぁそうでもしないと宿泊業界自体が沈没していきそうだったから、やむなしに産声を上げた子だね。

直前割引ホテル2.jpg

ラストミニッツの宿予約、直前割引があったり、当日宿泊予約でのお得感があったりして。

いいえ、ラストミニッツというのは、散りゆく桜の意味。

京都の桜名所を訪れる人たち向けに創った宿泊レートに、

ラストミニッツという名前を付けて、私たちの宿は観光客へ販売しているの。

だって、満開の桜ならば何の割引もせずにお部屋を販売しても、

宿泊客のみなさんには満足してもらえると思うけど、それがどうかしら、

4月も中旬すぎ、桜が散り去る寸前とか、少し前になると、桜を期待してきたのに、

もう散り途中にあるのを見て、がっかりされても不憫だから。

桜のラストミニッツ、その時期に宿泊予約してくれる人には、宿泊料金を割引してあげちゃう。

だからどうぞお願いね、京都の桜、特に私が一番だと思っている平野神社の桜を愛してね。

この桜ラストミニッツパッケージは、別に宿泊料金の割引だけじゃなくて、

アメニティグッズで差別化しているところにも注目して欲しいな。

シャンプーリンス、ボディーローション、ちょっと原価が高いけど、

しっかりしたブランドのものを提供しているから、女性には必ず喜ばれるはずなの。

直前ならではの美学ってある。

ホテルや旅館の予約が直前だと割引されるって、もうだいぶ世間に周知されているわ。

超一流アスリートがピーク時に引退するのは、最高潮が散りゆく寸前のギリギリを見極めたからね。

散りゆく寸前の花が愛しいっていうのも、見える人には見えるラストミニッツの楽しさ。

葉桜を美しいと思う心境って、すごく大人だと思うの。

ラストミニッツの宿予約をして、散り桜と葉桜を愛でる旅行、

そんなのも、新しい4月中旬のイベントになると思わない?

当日割引の宿に儚さを感じて、わたしは涙もろくなっていた。

だって、宿泊業界の商品である宿は、在庫が抱えられなく、明日になれば消えてしまう存在。

泡雪のごとく、霧雨のごとく、現実の姿が見えない、もろいものだから。

今夜のお客さんがつかなかった宿の部屋は、

主を欠いたまま、音のない夜を過ごさないといけない。

宿の経営者としては、販売できなかったことで一銭も収入がなく、稼働率が下がるダメージ。

感傷的なことを言えば、せっかく宿泊客のために飾り揃えた宿が、

そのまま使われずに一夜を過ごさないといけない寂しさ。

いつか、技術の革新があれば、今夜の空き宿が、明日の在庫となりうるのだろうか。

いいえ、こればかりは代用が効かないもの。

そしてわたしは当日割引の宿という新商品に力を注ぐようになっていった。

どうせ暗闇の中で過ごさせてしまう空き部屋を、どうにか明るい人の声で埋められないか。

もちろん儲けのことも考えてだけど、稼働率を上げるためなら、若干の割引なんて厭わない。

宿泊日の直前なら、もう通常ルートで宿泊予約が入るわけもないから、

思い切った当日割引を設定してみる。

この当日割引の宿は、思わぬ成果をあげることになった。

正直、ウチの宿では当日割引には50%割引という無謀なサービスをつぎ込んでみた。

それはひとえに、稼働率を上げて賑やかな宿にしたかったからという理由で、

別に当日割引のお客様が利益になっているわけじゃない。

でも、払ってくれる宿泊代は、宿の従業員たちの人件費をペイしてくれたし、何より宿が人で埋まって活気が出た。

すると、宿の口コミサイトではウチの宿が、

賑やかでサービスの良い宿だということで評判になって、当日割引以外の通常宿泊客が増えたんだ。

ありがたいことね、当日割引の宿。

なにかきっかけがあれば、あの稼働率に苦しんで無音が続いた宿が、

宿泊客で埋まり、収支も稼働率も上がる宿になる。

当日割引の宿に力強さを感じて、わたしは涙もろくなっていた。

直前割引で宿を売ることが、本当に宿泊業界のためになっているのか?
旅行業界人としての苦悩がそこにあること、少しグチっぽくなるけど、聞いてもらってもいいかな。
サービス業では、一度引き下がった単価が上がることはなかなかない。

大概が、そのまま流されるように引き下げられ、いつしかそれが一般的な単価として世に認識されてしまう。
もちろん、必要以上に単価を下げることは中長期的に考えれば、
宿と宿泊者、両方にとって決して良いものではない。
そもそも採算が取れていない単価であれば、宿側の体力は徐々に削られていき、
いつか倒産のごとき目にあうかもしれない。

宿泊客を宿に呼び寄せるためには、直前割引は良いツールだったし、
その宿泊客が宿以外で地元に落とすお金で地域は潤っていたが、
肝心なホテルが潰れれば、そのサイクルも急にピタ、っと止まってしまう。
宿が幾つか地域で競合していればこそ、直前割引の宿のような宿泊割引料金ができていたが、
寡占された宿では、割引制度など淘汰されていき、
結局、宿泊者は割引を受けずに宿に滞在しなくてはならなくなる。
旅行業界は、航空業界や宿泊業界の、重要な販売ツールであり続ける。
とりわけ日本においては、一息にネットビジネスでの直売にはならず、
2100年ぐらいまでは旅行会社の販売網に頼らなくてはやっていけないのが、航空業界・宿泊業界だ。

その販売リーダーである旅行会社の一員として、直前割引の宿を過度に販売するのは気が引けるなぁ。
適正価格が幾らなのか、まぁ明確な基準はないけど、割引ありきで、
正規運賃が形骸化されるのはあまり好ましいものじゃない。
正規運賃が高いなら、その価格自体を引き下げればよくて、
安直に直前割引の宿なんてプロモーションをすべきじゃないよね。
直前割引で宿を売ることが、本当に宿泊業界のためになっているのか?
結論は、あまりためにはなっていないでしょ、ということです。
これからもまぁほどほどぐらいに、直前割引の宿は売っておきましょう。

直前割引の宿は、宿業界の常識を覆す。
宿って何十年も同じ場所で、同じ設備で営業していると思われがちなんだけど、
所詮現在の世の中は、十年二十年もすれば環境変化が著しく、同じ顧客層が訪れるとは限らない。

ハコモノ産業、装置産業である宿業界だが、数十年先を当て込んだ投資は、
宿にとっては不幸なリスクにしかならなくなっているのは、すでに宿業界の常識。
だからウチの宿は、直前割引宿としてもっとタイムリーに初期投資を
回収するような企画で宿を立ち上げるのだよ。

いいかな、この宿は老舗というブランドなんてどうでもいい。
ブームになっている観光地に、きっと寿命は十年、あまり設備投資しない形で宿を出して、
直前割引プランをバリバリに売り出して、宿へとお客様を誘致する。
なにせ賞味期限ありの宿だから、短期的な利益を確保するためにあらゆる手を打つ。
普通の宿が、地元との関係、実績と信頼、リピーター、
日本人らしい感傷を求めるのに反して、我が直前割引宿は、極端にビジネスライクだ。

宿業界の黒船、それが直前割引宿だと言われて久しい。
そんなのは日本の宿じゃないと叩かれても、一部の宿のように時代に合わずに倒産したり、
無残な姿をさらけ出すよりはマシだと、強い信念をもって、このまま直前割引宿を続けていくのさ。

ラストミニッツ、当日割引をなんと容易に想い浮かべさせる、絶妙なネーミングなのか。
ラストディでもなく、ラストアウワーでもなく、ラストミニッツ。
そんな分刻みで迫られたら、誰だって当日割引に焦って、
宿予約したくなる気持ちを抑えられないよ。
京都に観光宿は数あれど、ラストミニッツで当日割引予約を受け付けた宿は少ない。

まぁ、京都に観光に来る方は、ほとんどが前もって旅行計画を立ててくる方ばかりで、
直前で「あー行く所ないから京都でも行くかー」なんてノリは、あまりないっていうのもあるけどね。
ラストミニッツで当日割引の宿という考え方が観光客に生まれた時、
そんな我々の先入観をも打ち砕く発想が、ぽこっと、新しく生まれたのも事実だった。
それは、先に述べた京都の観光の仕方にも、当日割引の宿を利用して、
直前計画で京都を訪れようとする方が、近畿圏・中部圏から出てきたということ。

新幹線を使って観光に来る方は、そもそも新幹線代に当日割引はないから、
ちょっとコストメリットがなくて、当日割引の宿があっても決定的な効果はない。
でも、高速道路が週末千円になったことで、近畿・中部からは、
移動手段も車なら安いし、その上、ホテルをラストミニッツの当日割引宿なら、
さらにコストが軽く京都観光ができる、そのことを知って、
それまで存在していなかったニーズが発掘され、結果的に、
京都でも当日割引の宿泊予約の実数が増えてきたのではありませんか。

宿だって嬉しいよ、当日割引料金で、多少の客室単価が下がっても、
とにかく100%に近い稼働率が欲しい。
稼働率がなくて、客室単価がいい数字でも、長期的には
やはり稼働率が高くてナンボの商売、一件ごとの単価や収益率は二の次なのが、宿ビジネスなのだから。
ラストミニッツが掻き起こした新しい需要が、宿業界を変えていく、より活性化させていく。

直前割引宿はおキライですか?
割引バリバリの宿に「安かろう、悪かろう」のイメージを持つのも古臭くなってきましたね。
通常の品質のホテルを、価格だけ割引しちゃうのが、直前割引宿だから。

そもそも、直前割引したところで、宿には特段のメリットはない。

若干の収入がはいっても、宿の従業員の給与にはプラスに作用しないし。
日本の全職業の平均年収は、35歳で435万。
宿泊業界の平均年収は、420万円。
あー、わずかに足りません!
つまり、営利目的で直前割引宿をやっているわけではなく、
むしろ雇用継続や、宿泊者のために宿を営んでいるのが、日本の一般的な宿なんですよ。

善良な宿たち、ボランティア精神に溢れた直前割引宿。
だからちゃんと目を見開いて、直前割引宿と向き合わないといけない。
ちっ、直前割引でも宿なんて高いぜ、と心中思っているのは、狭い度量の人。
身を呈して、自分たちの旅行プランを助けてくれるのが直前割引宿だと思ったら、
なんだか感謝の気持ちもでてくるってとこじゃないか。

心を入れ替えたからって、別に割引なしの宿泊料金で予約することが、あなたの罪滅ぼしではないさ。
宿屋の人たちはみんな善い人。それを認識して、自分にできることをして、
直前割引宿にそれ以上の無茶は要望しなければ、それでいいんじゃないかなぁ。
もう一回。直前割引宿はおキライですか?

随分と思いきった当日宿を作ったもんだね。
事前予約不可、当日という直前予約のみ受け付けるホテル。
予約ができないホテル=ラブホテルじゃないよ、予約者を前提としたちょいセレブのホテルだもん。
ただ、予約が当日しかできない宿っていうだけ。
その直前宿の特徴は、この「当日予約のみ可」というところにある。

何故こうなったのか、って、それは直前宿オーナーの、当日割引への不信から来ているんだ。
前々から当日割引のみを受け付けていたホテルじゃない。
普通に事前予約できたし、早期予約割引制度だってもうけていた。
色々な割引制度があって、その中から宿泊客が自分に合う割引商品を選択する形だったんだ。

当時は、直前割引が爆発的に流行った時代。
宿泊業界では早期予約割引を導入して同業同士の体力争いとなっていたのに、
それに加えて直前割引の流行だから、
まるで普通の料金を払って泊まるお客さんがいなくなっていて、
全員が何かの割引を適用して泊まるのが当たり前になっていたんだ。
中でも、直前割引の悪用が際立っていた。

知恵をつけてしまった旅行者は、どうせあらかじめ予定が決まらないし、
早く申し込んでも宿泊直前でも同じように割引が得られるのだから、
といって、多くの旅行者が直前割引を使う傾向があったんだ。
そのホテルでも直前割引での宿泊者が約7割にもなって、
なんだか普通に予約してくれてきている人たちが馬鹿馬鹿しい感じになってしまって、
直前宿のオーナーも「不公平感がある」と思うようになっていったんだ。

だからいっそ全部を当日割引にしてしまえば、公平になる。
料金もフラットになって、色々な企画にヒトとカネと時間を費やすこともない、
と思って、全部屋当日割引のみの宿っていうことにしたんだ。
それは良いことではないかもしれないね。
勝手な宿泊者の選択にヘソを曲げた、っていうか、でもその選択肢を与えたのは自分だから、
別に宿泊者が割引を多用しすぎたからって、悪いことじゃない。
当日宿は当日だけで。
他ホテルとの差別化、あとはそういう変わった制度がいい宣伝材料になって、
当日宿が流行ることになればよいのだけど。

宿泊客予備軍に、どうやって当日割引の宿を提案するか。
わたしは地元の幾つかのホテルと連携しながら、当日割引の宿利用者拡大に注力している。
狙う客層はズバリ、深夜割増のタクシーで帰宅する飲み会帰りの人。
家族へのアリバイ作りに、高いタクシー代を払ってまで帰宅したいという気持ちは分かる。

でもね家族としたら、そのために割高な出費をして、夜中に騒がしく帰宅してもらうよりは
いっそそのまま会社近くの宿に当日割引で宿泊して、めいっぱい眠った翌日に
普通に出社する方が、金銭的にも時間的にも精神的にもメリットがあると判断できると思うんだ。

夜23時頃、そろそろ終電がピンチになりつつある時間帯からが、当日割引の宿の売り込み好機。
地元の飲み屋には話は通してあるから、faxで一斉送信した当日割引の宿リストを、
まだ飲み続けているお客様に回覧してもらうシステム。

タクシー代よりも安く近く、そして一杯眠れる、すぐ近所に当日割引の宿あります!
その売り文句は地元の飲み屋とホテルにお金を落としてもらうための連携プレイ。
金曜日の夜ならまだ知れず、明日も会社に行かなくちゃいけない平日の夜ならば、
当日割引の宿で宿泊して、お金も体力もセーブして、平日を続ければいい。

飲んでも家に帰れ、という考え方は、もう時間の問題で崩壊していく古いサラリーマン神話。
ホテル側がそれを気付かせる仕掛けをいっぱい作って、新しいホテルマーケットを開拓さ。
さぁ、宿泊予備軍を呼び込んで、宿泊客の新規開拓をする大仕事が待っている!

直前予約でウチの旅館に宿泊してきた方への対処に困っている。

世間に周知されている「旅館は直前予約で安くなる!」というイメージは

なかなか根強く、予約希望者へ「当館は、直前予約による割引はございません」

という言い方では、宿泊客の心情を逆なでしてしまうだけだ。

だから、何かしら納得感のあるメリットを提示しながら、

ウチの旅館としてもメリットが出る方法を考えるべく、終日社内会議を開いて、

みんなのアイディアを集めているが、なかなかこれという方法がない。

そんな私が閃いたのは、とある焼肉屋で食事をして会計とした際のことだった。

「次回にこの割引券をお使いくださいませ」と言われて渡されたのは、

次回にこの店で食事をしたら使えるという5百円の割引券だった。

当たり前ながらその場の会計では使えなく、この割引券を使いたかったら

再度来店する必要がある、しかも、その割引チケットの有効期限は2か月以内だった。

なるほど、と私は思った。

その割引券がサイフの中に入っている限り、利用客はひょっとしたら

また再びその焼肉店を訪れたくなる気持ちがあるもの。

この経験をウチの旅館に取り入れようと、思い切った割引制度を設計してみた。

あっ、直前予約のお申し込みですね。

ウチの旅館では、直前予約のお客様だけに特別クーポンをお渡しさせていただいております。

次回、ウチの旅館をご利用いただく時に、なんと50%の割引を

させていただく特別クーポンでして、なんと有効期限は無制限となります。

今回は直前予約となりますので特別割引設定はございませんが、

次回ご利用いただくときにこれだけお得になるのは、他にはございませんよ。

将来いつかのお楽しみにしておいてくださいませ。

これがウチの旅館の直前予約に対する割引制度であり、長い目で見れば

ウチの旅館の認知度だとかリピーター率を上げる仕掛けになっている。

損して得取れ、いいえ、この直前予約の旅館では、得して損取れ、

というコンセプトでサービスを展開しているのだよ。


当日割引によって、温泉旅館はもっと注目されるはず。

どうもこの考えに自信があって、大きな口を叩いてしまう。

日本人は老若男女、温泉好きというのは分かるよね。

年寄りはもちろん、家族づれ、カップル、女同志、男同志、

社員旅行、どんな人たちでもどんな集まりでも、温泉旅館だけは

誰もが目をキラキラさせて向かう場所でしょ。

「私は温泉旅館大っ嫌い!」って言う人を、私はほとんど知らない。

今、温泉に風が吹いてきていると私が広言する理由。

それは、温泉旅館にもインターネット予約が普及してきたということだ。

ネットは、数多い情報量の中からいかに目立って、見る人を注目させるかが命だ。

それがネットにおけるブランド力といってもよく、その目だたさせる方法を

追求して莫大な広告費が必要とされている業界は多いんだ。

だが、温泉旅館は、もうすでにその最高のブランドを得ている。

温泉マーク♨という、たった1字で、分かりやすい絵が、

日本人ならほぼ全員が知っている共通のマークがあるじゃないか!

昔は温泉マーク♨が「さかさくらげ」という隠語になり、

連れ込み旅館とか風俗営業施設として認識されたこともあった。

現在じゃ、温泉マーク♨は本来の市民権、本来の意味を取り戻したと思う。

誰もが温泉マーク♨を見て「温泉旅館だなぁ」と思うぐらい、

温泉マーク♨というのは定着しているのだから。

そこで昨今の当日割引ブーム。

当日割引っていうのは、インターネットを通じてでしか割引にならないから、

いかにネットと相性がいいかが、当日割引のヒット要素になる。

そこで、温泉マーク♨だ。

あの、たった1字1絵で、見る人たちみんなに意味を伝えてしまう、

万能のしるし、トランプで言えばジョーカーに当たるあのマークが、

ネットの世界では黄金の価値を持っている。

「当日割♨1万円」

これだけで良い。

長々と売り言葉を並べるよりも、わずか6文字のこの言葉と絵だけで、言いたいことは伝わる。

その分文字を大きくすれば、ネットユーザーの目に留まりやすく、集客が見込めるじゃないか。

温泉という全日本人に好まれる無敵のカード、当日割引というお得感、

ネットに強い温泉マーク♨というブランド力、これらを組み合わせた

温泉旅館の当日割引が、ヒットしないワケがない。

強気で私が言う「当日割引 温泉旅館」のこと、あなたも同調してくれるかなぁ?

日本の旅館の素晴らしさを、世界に伝達する。
旅館らしい魅力をウリに、サービスと収益の両立を実現させる。
このことを叶えるツールとして、ウチの旅館で導入したのは、直前割引の旅館。
まずはサービス。
これはつまり、常に豊富なお客様と接し、場数をつみ、反復練習と定期的な専門トレーニングをする。

そのためには、賑わいのある旅館でなくちゃいけない。
お客様が滅多にしか訪れない旅館でいては、サービスの向上なんて望むべくもない。
旅館の素晴らしさとは、まぁサービスとほぼイコールだけど、
ちゃんとお金がまわっている旅館であれば、内装も外装もメンテナンスできるし、
提供する食事やらお部屋やらにも、気を使うことができる。

良い循環にもっていくためには、つまり、いかに定期的に満室状態にするか、
それがキーになることをウチの旅館は認識していた。
それまでは、ウチの旅館は法人需要に収支面をほぼ依存していた。
法人需要を呼び込む工数は、個人需要の工数と同等。
そのくせ、単価が良く、数もあるため、売上が抜群に大きいので、美味しい顧客だった。
法人顧客の宿泊はもちろん、いかに宴会を獲得するか、
これが旅館の黒字に直結するキーワードだったのは、もう旅館業界の常識だったのだ。

ウチの旅館は早々にマインドチェンジし、そこに+αして、個人需要を掘り起こすべく、
直前割引の旅館として、もうひとつの刀を握ったのだ。
どうしても季節、経済、社会動向に左右される法人需要だけでは安定が保てないから、
それを補完するための個人需要、直前割引の旅館をアピールすることで、
常に満室状態をキープすることができた。

活性化された旅館は、おのずと品質が向上してゆき、人気の旅館として不動の位置を築いていった。
直前割引の旅館は羽ばたくよ、目の前の割引で一見損をしているように見えて、
実は長期的な利益を叩きだすのが、この直前割引の旅館なんだと、ウチの旅館は知っている。

旅館が直前割引をしない、なんて、誰が作ったイメージなの?
ホテルは直前割引を積極的にセールスしているけど、旅館は保守的だから、
無暗やたらに割引料金を出していない?

いえいえ、私はそんなことはないと思うよ。
だって、実は旅館の方が直前割引料金を出しやすい環境にあるの。
ホテルも旅館も、初期の設備投資費用がすごく高いのは誰もが想像できるでしょう。
建物の建築費用とかベッドやお風呂を新設したり、色々な室内調度品を準備したりね。
その初期投資費用を減価償却するのに、一般的には10年はかかると言われるのが
ホテルや旅館業界の常識となっているから。

裏を返せば、建築10年が経って、原価償却が終わったホテルや旅館は、
あとは料理の原材料費や人件費さえペイできれば、他は利益に回るだけってこと。
そんな旅館とかだったら、人気を出すために直前割引ができるよね、
だって原材料や人件費は、宿泊代の3-4割程度にしかならないのだから。
そうだよ、古い旅館ならば、そして、一般的にホテルよりも旅館が古い建物が多いことを考えれば、
ホテルなんかより旅館のほうがずっと直前割引料金をアピールできる環境が整っているじゃない。

詳しくは個別のホテルや旅館の経営状態に左右されるけど、絶対数でいったら、
ホテルより旅館の方が古くて直前割引を提供しやすいのだから。
問題は旅館のやる気と、インターネットサイトで販売することへの積極性だけね。
旅館の建物が古いのと一緒で、オーナーも古い方が多い(失礼)イメージだから、
インターネットを通じての直前割引料金の提供に抵抗感を示す人が多いことでしょう。
結局、環境は整っているのに、直前割引の旅館を意識する旅館オーナーのセンスで、
ホテルにひけを取っているのが旅館なのかしら。

旅館の顧客が、徐々にホテル側にシェアを奪われていっているのは事実だけど、
それって直前割引という果実に目覚めていない旅館側の怠慢から生まれたものだから。
さぁ、旅館の直前割引宿泊料金というニッチマーケットで、
私の活動は競合ライバルも少ない条件が整っているし、ひょっとしたら大化けして、
直前割引=旅館というイメージが出来上がるかもしれないね。

残念ながら、当日予約でウチの旅館に泊まりに来た方へ、
料金割引のメリット感を提供することはできないの。
巷じゃ、当日予約なら当日割引価格があるとかうたって、
当日予約をすすめる旅館もあるけれど、冷静に考えてみれば、
じゃぁ、何か月も前からウチの旅館に泊まるって計画して事前予約してきてくれた
お客さんのほうが、ウチの旅館に対するロイヤリティも高いでしょ。

だから、いくらなんでも当日予約のお客さんにだけ特別な割引をしちゃうと、
全体のシステムが狂ってきちゃう。
やっぱり、一番のメリットは事前割引してきてくれたお客さんに提供しなくちゃ、
公平性にも欠けるし、旅館側としても筋の通った対応とは言えないから。
でもこれは旅館側の理屈であって、当日予約をしてくる宿泊客側の
理屈ではないことも、私は心得ている。
とにかく当日予約、当日割引っていう言葉を出して、なんらか通常以上のメリットを獲得して、
ご自分の旅行を満足させるものにしたい、というのは素直な気持ちだから。

ウチの旅館じゃ、当日予約=決して深い割引をされた料金ではない、ということになるの。
ということは、宿泊単価が高いお客さん、つまり上客じゃないの。
だったら、当日予約だからじゃなくて、普通に宿泊単価が高いお客さん向けの
サービスをそのまま当てはめてあげればいいのよ。
それでウチの旅館は、当日予約の方へは、源泉掛け流しの露天風呂の
貸し切りサービスを無料提供することにしている。

お部屋のタイプを半露天付きの畳部屋にアップグレードしてあげたいけど、
こればっかりは当日の空室次第だから、事前ギャランティーできるものじゃないの。
ウチの旅館として、当日予約をしてくるお客様へ、事前確約できるのは、
源泉掛け流しの露天風呂の貸し切りサービスの無料提供だけ。
それでもまぁ、結構なご好評をいただいているのは嬉しいこと。
やっぱり、大小はともかく、なんらかの特別対応をしてあげること、
それが宿泊客の心を掴む方法なんだと、私はこの当日予約の件で、より痛感した気がしているのよ。

当日割引旅館で、あの憎きホテルどもに、一泡吹かせてやる!
旅館経営者の端くれとして、私の鼻息は荒く、旅館再生に向ける意気込みは確かなもの。
いいかな、このジャパンにおいて、ホテル>旅館だと勘違いしていないかな?
勝手な思い込みじゃなく、ここは事実を数字で抑えておこうよ。
平成19年
旅館  52,000件(82万室)
ホテル  9,500件(76万室)
昭和63年
旅館  78,000件(102万室)
ホテル  4,500件( 34万室)

どうだね、この数字は?
だから、ジャパンにおいて、まだまだ、まだまだ、
ホテル<旅館という事実に揺らぎはないのだよ、キミ。
それはね、この20年の間に、ホテルの数は倍増し、旅館は倒産していった。
それでも宿泊客を受け入れる主役はまだ旅館、というのがジャパンの傾向。
旅館数の多さを武器に、私たちは旅館経営者協議会を通じて、旅館の中に当日割引制度を設けようとしている。

これでPUSH! PUSH!
なにがホテルだぁ、ここジャパンの土地で、横文字なんてクールでキャッチーで、羨ましさ100%じゃないか!
旅館復権に向け、当日割引旅館プロジェクトはもう止まらないさ。
あとちょい、いつの間にか、ジャパンに当日割引旅館が再生の狼煙をあげるから。

直前割引の旅館を名乗る前に、考えておきたいことがある。
それはシステムのバランス、ということ。
宿泊客に直前割引の料金予約を提供して、稼働率が高い旅館をキープすることも大切だが、
直前割引という従来になかった割引制度を導入することによって、
他の料金形態とのバランスが失われ、何かもっと大きな損失にならないだろうか、
という危惧を検証しておくことだ。

社会のシステム、というとちょっと大げさだが、ウチのような小さな旅館にでも、
システムというものはあって、いやいや、予約システムのことじゃなくて、
どういった料金でどのぐらいの方が泊まってくれれば採算が取れる、
といった旅館運営のシステムのことだよ。
今は深い割引率で提供しているお部屋は、全体の10%程度を基本としていて、
その10%の割引料金をアイキャッチに、他の割引率の浅い料金を販売することで、
なんとか旅館全体の収支を確保している。

これが直前割引の導入によって、全体の30%が直前割引などの割引商品に
なってしまったら、ウチの旅館の収支は目減りしてしまうのではないだろうか。
いいや、今までの収支には宿泊してくれなかった部屋は売上ゼロ円で計上されていて、
それが直前割引によって単価は安くとも、お客さんが入ってくれれば、
今まで以上の金額が計上されるから、ひょっとしたら売上と利益ともに、
今までになかったレベルまで引き上げてくれるのが、直前割引かもしれない。

直前割引の旅館、直前割引の旅館。
こんなに悩ましい賭けを、これまで目にしたことはなかったな。
冒険をして、よもやすれば増収を勝ち得るかもしれない、
あるいは客室単価が落ちるばかりで、旅館にとっては経営バランスを欠き、
倒産のごとき目にあうだけのものかもしれない。
直前割引という諸刃の剣を目の前にして、私の経営者としての心は揺れ動いている。

当日割引の旅館を探すとき、僕が宿泊客だったら、どうやって当日割引料金がある旅館を探すだろう。
このことの答えを深堀することが、僕が経営する旅館に、
当日割引で予約するお客さんをもたらせてくれる、僕はそう考えていた。

ウチの旅館でいえば、データ上、1週間以上前に宿泊予約を入れてくる宿泊客が
全体の9割を占めていて、「明日からの宿泊予約を入れたいんです」
「今日、空いている部屋はありますか?」という問い合わせは至ってレアケースだ。
旅館側の受け止めとしても、当日予約を入れてくれる宿泊客は、
結構異質というか、「なんでこんな直前に予約してくるの?」ぐらいに、
あまり歓迎する態度を示していなく、
まぁ、正規料金で宿泊するしかないけどどうする?といった、旅館の一般的な対応をしていた。

だがしかし、ウチの旅館でも稼働率の伸び悩みは深刻で、
国内旅行業界全体の人気低下の影響はモロに現れており、
今やどこの温泉旅館もそうだが、ホテルにお客さんを取られている印象もありつつ、
なにしろ稼働率は微減のラインをたどりつつある。
だから、例え客室単価が下がっても、なんとか稼働率だけは確保したい。
お客さんさえこれば、旅館の関連商品である料理とかお酒とかで、いくばくかの収益は入ってくる。

そうだ、まずは稼働率が安定すること、人の流れだけは断ち切らないこと、
これが旅館存続の柱になっているのだ。
そこで僕が目を付けたのは、当日割引の旅館として内外に存在をアピールすること。
旅館はあまり当日割引のような割引料金を出したがらないから、
一般顧客からすると旅館=高い、というイメージを持たれがちだ。
そこを当日割引の旅館で払拭すれば、多少単価が落ちても、稼働率は確保できる。
さて、僕が宿泊客だったら、どうやって当日割引料金がある旅館を探すのか。
それはやはり、インターネットだろうな、それも旅館のホームページを
ひとつひとつ周ってみるのは面倒だから、旅行会社の宿泊予約サイトで、
複数の旅館やホテルの料金を検索できるものを集中的に見ることだろう。

そうだ、やはり大手の旅行会社宿泊予約サイトと提携して、ウチを広告してもらうのが一番有効だろう。
自前でサイトを立ち上げても保守や維持、そして宣伝に多大な費用がかかるから、
幾ばくかの手数料はもちろんかかるにしても、旅行会社のメジャーな宿泊予約サイトに
お世話になって、ウチの旅館を売ってもらおうじゃないか。
引き続き、旅行会社と旅館の蜜月関係は続くのだなぁ。

旅館に当日予約を申し込んでくる宿泊客には、ひとつの傾向がある。

それは、夏休み前の当日予約旅館が多いということ。
なかなか理解できない宿泊客の傾向なんだ。
だって、夏休みともなれば年間の一大イベント、
何か月も前から予定を立てて、それは綿密に計画を組んでいることでしょう。

それなのに、手前どもの旅館に申し込みをされてくる旅行客の皆様は、
夏休み前だというのに、当日予約で旅館に宿泊されようとする。
もっとも、夏休み前なのに当日予約できる旅館ばかりではないから、
実際の予約宿泊には結び付くとは限らないけど、
ネットから「当日予約 旅館」のキーワードを検索する人は、明らかにこの時期に倍増する。

旅館を当日に予約するほど、夏休みの計画ってしっかり事前に立てないものかなぁ?

思い出すのは自分の親のことだよ。
夏休みの前にもなれば、もう家族あげての大相談会をして、
いつどこに行って何をする、ってことを、家族一人一人が希望を出して、どれを選ぶかをみんなで話し合ったもの。
理由はそれぞれあれど、宿泊客をウェルカムする旅館としては、
本当は、夏休み専用の当日予約枠をつくってあげたい気持ちはある。

でも、夏休みは旅館側としても年間の掻き入れ時、
別に割引料金を設定しなくても、いくらでも宿泊客で部屋は満室になるんだ。
だからやっぱり夏休みだけは、当日予約割引の旅館って実現できないものだよ。

当日割引はないけど、空室があれば直前予約でも大歓迎でお迎えしよう。
これが夏休みにおける旅館側の精一杯のおもてなしだって、
宿泊を希望してくる当日予約お客様にご理解いただけると嬉しいんだがなぁ。




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火おんどり

夜闇の火祭り、ピントも炎も人の表情も最高な、奇跡の一枚

9年経ってもこれを超える写真が撮れない...

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いろは松の夜桜

彦根城の水堀、桜リフレクション

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まつきよ

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